「美・カネ・家族の名誉の微妙な関係」 細田尚美(東南アジア地域研究専攻)
フィリピンでは美人コンテストが大人気。地元のフィエスタなどで開かれる小さなコンテストから、各年のミス・フィリピンを決める全国大会まで、どんなものでも人々の話題をさらっています。昨年ミス・インターナショナルでフィリピン代表者が優勝したときは、もちろんテレビや新聞のトップ・ニュースを飾りました。
写真は、マニラのある下町で開かれた子どもの美人コンテストで準優勝した女の子です。彼女が惜しくも1位を逃したのは、彼女の「美しさ」が1位の子のそれよりも劣っていたためではありません。コミュニティ・レベルの美人コンテストの順位は、多くの場合、各候補者が集めた寄付の金額そのものによって決まるのです。言うなればフィエスタの資金集め。しかし子どもを出場させる家族はコミュニティ内での家族のプライドがかかっているので真剣です。考えられるだけの「つて」を使い、方々の親戚や知り合いに資金協力を求めます。
美人コンテストで優勝(あるいは準優勝)したときの記念写真は家族の自慢の品となり、家の中の最も目立つところに飾られます。でも、なぜこれが美人コンテストと呼ばれるのか――。ちょっと不思議に思った瞬間でした。