「マイ・クウェザの大きな手」 飯田雅史 (アフリカ地域研究専攻)
マイ・クウェザは現在60歳のおばあちゃん。僕は調査地では毎日、彼女の家を訪ねるのが日課になっていて、調査のことから政治や経済のこと、友人や家族のこと、日々の他愛のない雑談まで色んな話をしています。
彼女は若かりし頃、北ローデシアで知り合ったタンザニア人男性と結婚しますが、その後アフリカ諸国の独立の波とそれに伴う地域の政治的緊張によって生き別れてしまいます。母国に帰った後はジンバブウェの独立闘争を草の根レベルで支援する中で、看護師としての能力を発揮しました。現在はカソリック教会の平信徒説教師として子供達の指導に当たっています。
マイ・クウェザの人生はそのまま地域の現代史でもあり、彼女の手の皺一つ一つには彼女の思い出とともに、南部アフリカの歴史が刻み込まれているように思われるのです。