メ−ルマガジン
 

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     エチオピア・フィールドだより
       Ethiopia News Letter
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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              DEC. 2007[Vol.021]

         【もくじ】

    □ フィールドたより:西 真如
    □ EFS通信 No.21
     (1)エチオピアへ古民家移築
     (2)国際ワークショップ開催のお知らせ
        :2008年2月14日・15日
     (3)エチオピア・エリトリアの国境地帯緊迫化
     (4)スターバックス、エチオピアにコーヒー豆農家支援施設
        を建設すると発表

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        ■ フィールドたより ■
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              「決して言ってはならないこと」
           西 真如・京都大学グローバルCOE研究員

エチオピアにはじめて渡航するひとから、「文化や習慣との関係で、こ
れはやってはいけない、ということはありますか」と質問を受けること
があります。良くあるのは、誰かの家に招かれたときに、その家の女性
がコーヒーの準備を始めた場合でしょう。コーヒーを飲み終わるまえに
席を立つと、たいへん失礼にあたります。ただ実際には、ほんとうに急
いでいるときには席を立たざるを得ない場合もあって、そんなときは丁
重に謝りながら立ち去ることになります。

エチオピアの人たちにとって、これは絶対にいけない、ということは他
にあります。たとえばある人が死んで、彼には隣の町で暮らしている娘
があったとすると、急いで彼女を呼び寄せる必要がある、これはエチオ
ピアに限らず、どこの国でも同じでしょう。ただしエチオピアでは、そ
の娘さんに「あなたのお父さんが亡くなったよ」などという伝え方をす
ることは、決してありません。

「だって突然、肉親の死を知らされたら、そのひとがどんなに嘆き悲し
むか、それに対してどんな慰めの言葉をかけたらよいか、誰にもわから
ないだろう?」とエチオピアの人たちは説明してくれます。そこで、た
とえば「すぐ実家に帰って来いと、家族の人が言っているよ」などと嘘
をついて、娘さんを連れ出すのだそうです。彼女は家に近づくにつれ、
近所の人があわただしく動いている(葬儀の準備をしている)のを見て、
徐々に肉親の死を悟ることになります。

この例に限らず、死者の家族や近い親族に対して、誰がその事実を伝え
るか、どうやって伝えるか、これはエチオピアの人びとがもっとも慎重
になる局面です。コーヒーの作法とは違って、取り返しのつかない問題
だと考えられているからです。ひとの死にどうやって対処するかという
問題について、エチオピアの人たちは豊かな経験と知識を持ち合わせて
いますが、それは「死の伝え方」にまで及んでいます。

>西さんは、10年以上にわたってエチオピアの在来組織の研究をされ
てきました。西さんが関わってこられた在来組織は、住民から資金を集
めて道路を建設するなど非常に活発な活動をしています。最近は、HI
V予防運動についての研究も展開されています。研究活動以外にも「ア
ジアとアフリカをつなぐ会」でNPO活動に従事しています。また、エ
チオピアで開発協力にかかわるNGO職員、専門家、ボランティアらと、
エチオピアで調査をおこなっている研究者とが、互いに知識や経験を共
有することを目的とした「エチオピアフォーラム」というウェブサイト
を主催されています。

>西さんの研究テーマや内容については以下のサイトをご覧ください
http://www.jafore.org/9/research.html
>「アジアとアフリカをつなぐ会」
http://aaje.jafore.org/
>「エチオピアフォーラム」
http://www.jafore.org/ef/
>西さんが共著で書かれた「フィールドワーカーのためのアムハラ語
入門」は、初心者でもとてもわかりやすくアムハラ語をまなぶことが
できるテキストとして好評です。ご希望の方は、お名前、送付先住所
などを明記して以下のアドレスへご連絡ください。
amharic@jafore.org

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         ■ EFS通信 No.21 ■
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(1)エチオピアへ古民家移築
7月に世界文化遺産に登録された石見銀山遺跡(島根県大田市)のふも
との古民家を、世界遺産都市のエチオピア・ゴンダールに移築する計画
が進んでいます。ゴンダールの栄えた時期が石見銀山の開発・興隆期と
重なるということなどをきかっけにして、慶応大の三宅理一先生が、島
根県の空き屋対策に取り組む大田市の特定非営利活動法人「日本古民家
研究会」(成相脩代表)に打診したのがはじまりだそうです。骨組みの
柱、板材、建具を輸送し、資材の半分はエチオピアで調達の予定だそう
です。エチオピアのミレニアム行事の一環として、在エチオピア日本大
使館も協力し、日本館として展示したあと、職能訓練所として活用する
そうです。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200711030406.html
>日本古民家研究会
http://www.n-kominka.net/html/npo_kominka.html

(2)国際ワークショップ開催のお知らせ
2008年2月14日・15日にかけて、アジスアベバにおいて国際ワ
ークショップ「Local Knowledge and its Positive Practis」を開催し
ます(主催:アフリカ在来知研究会、グローバルCOEプロジェクト・
エチオピア・フィールド・ステーション)。持続的生業活動、ものつく
りの技法、在来組織、資源保全などさまざまなテーマのもとに、人々の
在来知の生成の過程と実践について議論をおこなう予定です。発表者は、
エチオピア、ウガンダ、インドなどで調査研究活動をおこなう若手研究
者が中心です。
>アフリカ在来知研究会のウェブサイト
http://zairaichi.org/

(3)エチオピア・エリトリアの国境地帯緊迫化
エチオピアとエリトリアの国境確定期限が延長されることなく11月末
で終了しました。外務省は、国境付近は緊張が高まり危険な状態になる
ことを予測して退避勧告・渡航延期するようによびかけています。これ
まで警備にあたってきた、1700名の国連エチオピア・エリトリア・
ミッション(UNEMEE)は、2008年はじめまでは国境地帯にと
どまっているとのことです。
>BBC(12月1日)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/7120834.stm
>外務省危険情報
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200711/2007111300242
>外務省危険情報継続
http://www.jiji.com/jc/c?g=saf2&k=2007112900851

(4)スターバックス、エチオピアにコーヒー豆農家支援施設を建設すると発表
スターバックスは、エチオピアでコーヒー農家を支援するためのセンタ
ーを2008年中に開設すると発表しました。センターは首都アディス
アベバに設置の予定で、コーヒーの品質向上に向けた技術指導などを通
じ、農家の生活水準向上を支援することを目的としています。世界中の
チェーン店で店員が使うエプロンを、エチオピアで生産する計画も明ら
かにしました。同様のセンターは中米コスタリカでも04年に開設して
います。
>エチオピア首相とスターバックス会長との会談
http://www.businesswire.com/portal/site/google/index.jsp?ndmViewId=news_view&newsId=20071128005888&newsLang=ja
>スターバックス、エチオピアに農家支援施設建設について発表
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2007112904072b1
>12月3日、ルワンダにもエチオピアと同様の施設を設立することを発表
http://www.afpbb.com/article/economy/2320746/2423740
>スターバックスとエチオピア政府のコーヒー豆商標登録問題について知りたい
方は以下のサイトをご覧ください
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1347

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         ◇ 編集委員から ◇
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11月24日、京都文教大学人間学部文化人類学科主催によるフィール
ドワーク実習「プロジェクト・ウオプル」5周年記念イベントに参加し
てきました。学生が実際にエチオピアを訪れ、さまざまな出来事を目の
あたりにしてそれをどんなふうに理解したらいいのか、一人一人が一生
懸命考えている姿がどの展示からもうかがえて好感がもてました。公開
シンポジウム(『同時代』の援助を考える〜暮らしをつなぐ協働の思想)
では、これまで異なる立場でエチオピアと10年以上かかわってきた3
名のパネリストの話を聞きました。どの方も個性的で、開発援助を実践
していくうえでの考え方やエチオピアの人達との関わり方など異なって
いるのが印象的でした。それぞれの現場で、カウンターパートになって
いるエチオピアの人もまじえることができたら、またちがう議論ができ
ておもしろそうだなとおもいました。(金子)
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