メ−ルマガジン
 

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     エチオピア・フィールドだより      
      Ethiopia News Letter    
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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                           May. 2008[Vol.024]

         【もくじ】

     □ フィールドたより:田中利和
     □ コラム:エチオピアのウシ    
     □ EFS通信 No.24
     (1)エチオピア産コーヒーから残留農薬
     (2)講演案内:エチオピア政府による穀物価格高騰への対策
     (3)アフリカ学会公開シンポジウム(II)終了
       「日本のアフリカ研究とアフリカの発展」
     (4)ヒビテ・アベラさん関西学院大学で特別講義

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         ■ フィールドたより ■
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          「父とアナログ時計」
            田中 利和
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)

ラジオから9時の時報が流れる度に、子供のような彼の笑顔が僕の頭
の中に浮かんでくる。

僕は、エチオピアの首都アディスアベバから南西に110キロの町ウ
ォリソ近郊の村で農業に関する調査をしている。僕はこの村で、70
歳になるBさんに息子として受け入れてもらっている。同じ家屋で寝
食をともにさせてもらい、農作業の手伝いをさせてもらいながら調査
を進めている。僕は、Bさんに家賃や生活費として毎月決まった金額
を渡しているわけではない。Bさんは「色々お互いに教えあえること
があるから、息子としてうけいれたのだよ。お金は重要ではない」と
いってくれる。

日本に帰国した時、僕を受け入れてくれたBさんに、何か少しでもお
礼の気持ちを表すことができないかと思い、プレゼントをもっていこ
うと思った。僕は、彼に似合いそうなアナログ時計を購入した。そし
て、Bさんの反応を期待しながら再びエチオピアの調査村に戻った。

Bさんは渡したプレゼントが時計とわかるや否や、僕が想像していた
以上に大変喜んでくれ、僕に何度もお礼を言ってくれた。朝から晩ま
で、四六時中時計を眺めては嬉しそうにしていた。その姿を見ている
と僕もとても嬉しくなった。

ある時、嬉しそうに時計を眺めているBさんに「今、何時ですか?」
とたずねてみた。しかし彼は、時計を見た後困った顔をして「何時な
のだ?」と僕に聞き返す。その夜僕がBさんの息子に話を聞くと、彼
は、Bさんは学校教育を受けたことがないし、アナログ時計の読み方
も知らないのだろうと言っていた。

翌日、息子と一緒に時計の読み方をBさんに説明する。Bさんは、と
ても謙虚に僕らの説明を聞いてくれた。単に調査者として現地で学ぶ
だけでなく、一緒に生活をすることを通してお互いが知っている事を
共有する。そしてわかったときのうれしさを共有する。こうやって関
係を深めていきたいと思う。

翌日からラジオが時報を伝えるたびに、時計の読み方を覚えたBさん
は今まで以上にうれしそうに時計を眺め、僕に「今9時だ」と笑顔で
話しかけてくれるのである。

>田中利和さんの研究テーマの詳細については以下のサイトをご覧く
ださい。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/research/tanaka.html

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          ■ コラム ■
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        「エチオピアのウシ」

エチオピア高地に牛耕が入ってきたのは、2000年以上まえのこと
だといわれています。アフリカで家畜が担っている役割は、地域によ
って多様です。サハラ以南のアフリカなかでも、古くからウシを耕作
に利用してきたのはエチオピア高地の人々だけだそうです。東アフリ
カで、ウシに非常に高い文化的価値をおく人々(特に牧畜民)は、ウ
シに耕具をつけて牽引させたりすることを好みません。そのような文
脈において、エチオピアの農耕社会でウシを牛耕用にもちいているこ
とは非常にめずらしく特徴的なことといえます。田中さんの予備調査
報告によれば、エチオピア西部のウォリソに暮らす農民たちは、牛耕
に利用できる去勢牛に高い価値をおいているそうです。

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        ■ EFS通信 No.24 ■
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(1)エチオピア産コーヒーから残留農薬
中国の加工品に対して厚生労働省が、輸入業者に対して検査命令をだ
しています。そのなかで、エチオピア産生鮮コーヒーからも「r−B
HC」など5種類の基準値を超える残留農薬が見つかり、検査命令が
出されました。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080510k0000m040187000c.html

(2)講演案内:エチオピア政府による穀物価格高騰への対策
5月23日(金)18:30から21:00まで、環境パートナーシ
ップオフィスEPO会議室(東京都渋谷区神宮前5−53−67コス
モス青山B2F)において、白鳥清志さんが、エチオピア政府による
穀物価格高騰への対策について講演されました。
http://www.eic.or.jp/event/?act=view&serial=15072&category=

(3)アフリカ学会公開シンポジウム(II)終了:
「日本のアフリカ研究とアフリカの発展」
5月24日に龍谷大学において「日本のアフリカ研究とアフリカの発
展」という公開シンポジウム(II)が開催されました。重田眞義が
パネリストとして「アフリカ研究における当事者意識の問題点」とい
う演題で発表しました。
http://www.jaas2008.fks.ryukoku.ac.jp/symposium.htm

(4)ヒビテ・アベラさん関西学院大学で特別講義
6月3日(火)9時〜10時30分にかけて、関西学院大学において
ヒビテ・アベラさんが特別講義を開講します。ヒビテさんは、エチオ
ピア・テレビに編集者・レポーターとして勤務されています。講演タ
イトルは、エチオピアにおける女子学生への教育政策と女性ジャーナ
リストの抱える現実です。(Policies for Girl 
Students and Realities for Woman 
Jounalists in Ethiopia)

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       ◇ 編集委員から ◇
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ジンバブエほどではないのかもしれませんが、アジスアベバも生活す
るのがだんだん厳しい状況になってきているようです。エチオピアに
渡航中の大学院生から、アジスアベバ市内で頻繁に計画停電が実施さ
れているとの連絡をうけました。また、1週間うち少なくとも2〜3
回は断水が実施されているそうです。これに加えて、インフレ率が2
0%になったという報告もでているそうです。最近、エチオピアの友
人から、先週はコメが1kg5ブル75セントで購入できたのに、今
週に入ってから12ブル75セントで販売されているとのぼやきの近
況報告をもらいました。(金子守恵)
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