メ−ルマガジン
 



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     エチオピア・フィールドだより      
      Ethiopia News Letter    
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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              Jul. 2008[Vol.025]
      
          【もくじ】  

    □ フィールドたより:久田信一郎
    □ コラム:サウスオモ・リサーチセンター   
    □ EFS通信 No.25
    (1)アジスアベバ大学社会学部・ウィークリーセミナー報告        
        (2)映画紹介「おいしいコーヒーの真実」    
    (3)アクスムのオベリスク、元の場所に復元へ
    (4)エチオピア国立博物館に対する一般文化無償資金協力の書簡交換

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         ■ フィールドたより ■
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           「食事調査」   

            久田信一郎
 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程後期

今回初めて、開発プロジェクトの実務家としてではなく、調査者とし
てエチオピア西南部の農家に居候しました。比較的豊かだと言われる
南部の農家でも雨期が始まる6月頃には、備蓄がなくなりトウモロコ
シもコーヒー豆も市場で買っているようです。私が居候した世帯は、
世帯主とその妻が3人、子どもが14人、合計18人の大家族でした。

この雨期の時期に何を、どのように調理し、どのくらいの量を食べて
いるのだろうか、これがわたしがはじめて農家に居候して気になった
ことでした。そこで、食事を作ってくれた夫人に、次回わたしが来る
ときまで毎日、毎回の食事を書き取ってくれるように頼みました。彼
女たちは、食事の記録がなんの役にたつのかいぶかしげでした。「今
の食生活の記録を取ることで役に立つと思うか」と話したところ、よ
そ者の私(研究者)が、「私たちが何を食べているか知りたがってい
るので協力するだけで何の役にもたたない」ときっぱり言い切られて
しまいました。

3人の夫人のうちの1人は、「自分たちが何を料理して食べているか
知っている」と言いました。その通りだと思いました。しかし、どの
くらいの分量を食べているのか?子供の成長に合わせて今後どのくら
いの食料が必要となるのか?土地との関係で、彼女たちがそれぞれの
耕作地で子供を養うだけの収量をあげているのか?今後も子供の成長
に合わせて食べる量が増えても、学費を捻出するためにも、農産物を
売却した後1年間食べるだけの量があるのか知っているのだろうか?
興味は尽きません。これらのことを明らかにしても、何の役に立つの
か?さらに聞いても回答が得られるか不明です。

しかし、どの様な困難な状況でも生き抜いてきた証拠に彼らの現在の
生活があると思います。彼らの食事の記録を自然環境の変化、経済の
変化、政治の変化の中で生きぬいた彼らの知恵の記録としてとらえる
ことができるとおもいます。それに、わたしとしては、調査者が一方
的に理解するためだけではなく、食事を記録してもらうことを介して、
食糧生産や世帯経営のことをともに考えたり、議論できる機会を得た
いという希望もありました。

彼女たちとの大議論の末、次回私が9月に戻ってくるまで3か月ほど
記録を取ってから、再度役に立つのか考えてみるということになりま
した。次回来たときに、食事の記録がどんなふうにつけられているの
か(いないのか)、彼女たちとどんな議論をすることができるのか楽
しみにしたいとおもっています。

>久田さんは、24年にわたってエチオピアを中心に開発援助の分野
で活動を続けてこられました。現在は、大学院において研究者、実務
家、行政官だけではなく村にくらす人々が利用できるような住民参加
型の地理情報システムをつくりだすことに関心をもって調査研究を続
けられています。久田さんの研究の詳細については以下のサイトをご
覧ください。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/research/hisada.html

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          ■ コラム ■
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   「サウスオモ・リサーチセンター(SOCR)」

2002年に開設されたサウスオモ・リサーチセンター(南部州・南
オモ県・ジンカ市)に、2009年1月から京都大学からは重田眞義
が、ドイツのマックス・プランク研究所からはグンター・シュレー氏
が、ボードメンバーとして参画することがきまりました。2008年
5月27日に開催された会議では、今後SORCが、研究者のネット
ワークの拠点としてだけではなく、地元の学校や行政とも協働して学
生やコミュニティ・メンバーに対する教育活動にも積極的に参画する
ことなどが期待されていました。現在、SORCは、世界各国の研究
者が南オモ県でおこなった研究成果を再編集してSORCシリーズと
して出版する活動にとりくんでいます。
http://www.southethiopiaresearch.org/

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        ■ EFS通信 No.25 ■
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(1)アジスアベバ大学社会学部・ウィークリーセミナー報告
5月29日、午後4時〜5時30分まで、アジスアベバ大学社会学部
・ウィークリーセミナーにおいて重田眞義(京大ASAFAS教員)
が、”Japanese Research on Local Knowledge and Practices in
Ethiopia”というタイトルで、で講演しました。1980年代からの
日本人によるエチオピア研究について簡単に紹介した後、現在京大A
SAFASでおこなっている実践的地域研究についての教育・研究活
動について報告しました。講演に先立ち、先般他界された福井勝義さ
んに出席者全員で黙祷をささげました。

(2)映画紹介「おいしいコーヒーの真実」
コーヒーがわたしたちの口に運ばれるまでに、どのように生産、流通、
加工されているかをおいかけたドキュメンタリー。監督はイギリス人
のニック&マーク・フランシス兄弟。コーヒーは、世界で1日20億
杯も消費されている飲み物だそうです。それなのになぜ生産農家が食
糧援助を受けるほど貧困に苦んでいるのか、そのパラドックスを追い
かけたのがこの映画だそうです。
http://www.cinemacafe.net/news/cgi/review/2008/05/4028/

(3)アクスムのオベリスク、元の場所に復元へ
国連教育科学文化機関(ユネスコ)によれば、1937年にイタリア
軍にもちさられ、2005にエチオピアに里帰りを果たしたオベリス
クの復元作業が6月4日からはじまります。9月10日から一般公開
される予定だそうです。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2396632/2968699
>オベリスクの里帰りについての記事
http://www.afrikanet.info/index.php?option=com_content&task=view&id=789&Itemid=120
>オベリスクの里帰りについてのフィルム
「The Return of the Obelisk」by Samson Giorgis (Ethiopia) 2007,
64min. English Subtitles Filming Site: Rome, Addis Ababa, Axum http://zairaichi.org/j/activities/musicreligion.html

(4)エチオピア国立博物館に対する一般文化無償資金協力の書簡交換
6月9日に、エチオピア国立博物館に対して、化石の収蔵庫、標本棚
などの整備支援として一般文化無償資金協力をおこなうための書簡を、
駒野大使とエチオピア財務・経済開発担当国務大臣との間で交換しま
した。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h20/6/1180664_910.html
>エチオピア国立博物館には、「ルーシー」とよばれる最古の化石人
骨があります。1974年にエチオピア北東部において、アメリカ人
研究者が発見しました。現代人と同じく二足歩行していたとして、最
古の化石人骨といわれています。2007年から6年間、アメリカへ
貸し出し中だそうです。現在、アジスアベバ博物館には複製が展示さ
れています。
http://abcnews.go.com/WN/story?id=3542345&page=1

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          ◇ 編集委員から ◇
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「食生活の記録を取ることで役に立つと思うか」。巻頭エッセイのな
かでこの言葉を目にしたとき、私だったら「この表現を使いながら調
査に協力してほしいとはいえない」と真っ先に思いました。多くの場
合、わたしが知りたいと思うことは、村の人達はすでによく知ってい
るので、記録することで彼らが得ることはほとんどないと思っている
からです。ですが、記録してもらったことがどんな可能性をもつもの
か、記録してくれた人と議論しながらその意味をともに考える、とい
うのもお互いがいろんなことに気づくことができる機会になるのかも
しれないとも思いはじめました。これから久田さんが、記録してくれ
た人とどんなふうに大議論をしていくのか、その報告を楽しみに待ち
たいと思います。(金子)
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