研究者紹介

金子守恵

Morie Kaneko
日本学術振興会特別研究員<PD>

研究テーマと関心領域

研究テーマ: アフリカにおけるものづくりに関する研究−エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり

キーワード: 人と環境のインターフェイスとしてのものつくり、身体技法、土器、知識、習得過程、創造性

関心領域: 人類学、アフリカ地域研究


調査の概要

調査地: エチオピア西南部

調査歴:

青森県岩木山麓の開拓村における村おこしに関する人類学的調査 (卒業論文課題研究) 1997年 - 1998年.

エチオピア西南部における土器づくり女性集団の文化人類学的調査(文部省科学研究費による現地調査) 1998年10月 - 12月.

「生活の中に生きる土器づくり−エチオピア西南部オモ系農耕民アリの物質文化研究」(講談社野間アジア・アフリカ奨学金による現地調査) 1999年10月 - 2002年2月.

生活のなかにいきる土器作り−エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり(21COEフィールドステーション学生派遣による現地調査) 2003年1月 - 2003年3月.

フィールド調査の概要:

アリ地域には、ものづくりに専門にたずさわっている、マナとよばれる職能集団がある。マナのなかでもティラマナとよばれる集団の女性が、土器を専門に製作している。調査者は、職人たちに入門して、彼女らと生活をともにしながら、調査活動をおこなった。アリ地域内には、ティラマナの人々が集住している村がおよそ20ヶ村ある。そのなかの2ヶ村を拠点とし、ほかの村には1週間程度滞在した。インタビューと直接観察ができた職人は約65名である。


業績

学術論文:

2007「エチオピア西南部における土器職人のテクノ・ライフヒストリー:人生の軌跡に技術の変化を跡づける試み」後藤明編『土器の民族考古学』同成社.pp.15-25.

2006「生業としての土器づくり:エチオピア西南部の土器づくりの地域間比較にむけて」『アジア・アフリカ地域研究』No.06-2:522-539.

2005「地縁技術としての土器づくり:エチオピア西南部アリ地域における土器の野焼き」『アフリカ研究』67号:1-18.

2005,"Learning Process of Pottery Making in Ari people, Southern Ethiopia" African Study Monographs, Supplementary Issues No. 29: 73-81.

2001「トウモロコシにたどりつくまでに」『農耕の技術と文化』24号, pp. 69-88.

エッセイ:

「土器を微細につかいわけ.つくりわける人々:エチオピア西南部の土器づくりのフィールドから」佐藤耕造編『アフリカン・モード』pp.186-191.

「土器をつかい、つくり、うる人びと:エチオピア西南部に暮らす農耕民アリ」アフリカ理解プロジェクト編『アフリカン・アート&クラフト』明石書店.28-29.

2004、「つくりだされる土器のかたちとサイズ」『JANESニュースレター』、No.12: pp.22-24.

2002 「一人前の土器職人への道−エチオピア西南部アリ地域における土器作りのフィールド調査から」『アジア・アフリカ地域研究』, vol.2,pp.357-361.

エッセイ(ウエブページ):

土器職人への道」, エチオピアフォーラム, 2003年9月.
http://www.tsuno.org/ef/art/pot01.html

映像:

「ハイビジョン特集 シリーズ 天涯の地に少年は育つ『エチオピア 命の草の株分け』」命の草の株分け」2007年5月20日放映.NHK Hi-vision.撮影協力およびアリ語翻訳。

「資源人類学・第2回(担当講師:内堀基光)」ゲスト出演.放送大学学園.平成19年から22年度放送予定.

学術発表:

Variations in Pottery Making in Southwestern Ethiopia: A Comparative Study of Community-based Technologies, 16th International Conference of Ethiopian Studies, 2007.July2-6, Trondheim, Norway.

「土器をつくる身体:エチオピア西南部アリ女性職人を事例として」日本文化人類学会第41回研究大会.2007年6月4,5日.於名古屋大学.

「エチオピア西南部アリ女性土器職人の身体技法:土器づくりの地域間比較研究へむけて」日本ナイル・エチオピア学会第16回学術大会.2007年4月14日・15日.於慶応義塾大学.

Techno-lifehistory of Pottery Makers in Southwestern Ethiopia: Understanding the change of technique in their orbit of life, World Archaeological Conference, 2006.January 12-15, Osaka, Japan.

「地縁技術としての土器づくり:エチオピア西南部アリの女性職人による土器の野焼き」日本アフリカ学会第42回学術大会、2005年5月28日、29日、於東京外国語大学.

「身体技法にみるテクノ・ライフヒストリー:エチオピア西南部アリ女性職人の土器づくり」日本文化人類学会第39回研究大会、2005年5月21日、22日、於北海道大学.

「土器づくりの過程における身体技法:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人を事例にして」生態人類学会第10回研究大会、2005年3月18日、19日、於伊達歴史の杜カルチャーセンター.

Forming techniques and Creativities: Pottery making in Ari, Southwestern Ethiopia, 15th International Conference of Ethiopian Studies, Hunburge, July 2003.

「土器成形技術の特質と創造−エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり」, 日本アフリカ学会第39回学術大会, 東北大学, 2002年5月.

「職人が保持する土器成形技術の特質とその習得過程−エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり(3)」, 日本ナイル・エチオピア学会第11回学術大会, 岩手県牛の博物館, 2002年4月.

「土器づくりにみる在来論理:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり(1)」(重田眞義、木村隆と共同発表), 日本ナイル・エチオピア学会第8回学術大会, 長崎大学, 1999年7月.

「生活のなかにいきる土器づくり:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり(2)」、日本ナイル・エチオピア学会第8回学術大会、於長崎大学、1999年7月.

「トウモロコシにたどりつくまでに」, 生態人類学会第3回学術大会, 群馬県伊香保, 1998年3月.

学会発表(ポスター):

「生業としての土器づくり」日本アフリカ学会第44回学術大会.2007年5月26,27日.於長崎.

Creating the new styles for clients: Usage and classification of pots among the Ari, Southwestern Ethiopia. Kyoto symposium: Crossing Disciprinary Boundaries and Re-visioning Area Studies. 2006. November 9-13. Kyoto University. Kyoto. Japan.

Some rationales of open-firing techniques by women pottery makers among the Ari, Southwestern Ethiopia, World Archaeological Conference, 2006.January 12-15, Osaka, Japan.

ワークショップ:

「アフリカにおける土器の焼成:エチオピア西南部アリの女性職人による土器の野焼き」.ワークショップ:大阪府萱振遺跡出土の庄内・布留式土器の「スス・コゲからみた調理方法」と「黒斑からみた野焼き方法」、於大阪府文化財センター.2006年8月3日.

Creativity and indigenous techniques in Southwestern Ethiopia: The case of women potters among the Ari, 21st Century COE Program ‘Aiming for COE Integrated Area Studies’ International Workshop in Ethiopia: Positive Relationships between Culture and Development in East Africa, 2006.February 4-5, Addis Ababa and Arba Minch, Ethiopia.

研究会発表:

「土器職人のテクノ・ライフヒストリー:エチオピア西南部における土器づくりの変化と個人史とのかかわり」東南アジア考古学会117回例会、2006年10月28日、29日、於同志社女子大学.

「土器をつくってやりとりすること:エチオピア西南部アリ女性職人の生計活動と社会関係」資源人類学小生産物班定例研究会.2006年5月13日.於長崎歴史文化博物館.

「エチオピア西南部における土器職人のテクノ・ライフヒストリー:人生の軌跡に技術の変化を跡づける試み」考古学的民族誌研究会第3回研究会、2005年10月16日、於同志社女子大学.

「秘匿されない知識:エチオピア西南部アリ女性職人による知識資源としての土器づくり」資源人類学知識資源班定例研究会、2005年7月18日、於東京外国語大学.

「文脈化される土器づくりの過程:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人による地縁技術の習得・実践・創造」日本文化人類学会近畿地区研究懇談会博士論文発表会、2005年6月18日、於大阪大学.

「身体技法からみた土器づくりの過程:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人を事例として」資源人類学身体資源班定例研究会、2004年12月11日、於京大会館.

紀要等:

「文脈化される土器づくりの過程:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人による地縁技術の習得・実践・創造」京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士学位論文.2005年1月.

2003, Book Review (Living on the Edge: Marginalized Minorities of Craft Workers and Hunters in Southern Ethiopia), Nilo-Ethiopian Studies, Nos.8-9: pp.94-96.

「土器づくりの人類学的研究―エチオピア西南部オモ系農耕民アリの土器づくり」京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文(修士論文に相当)、2000年7月.

シンポジウム・講演

「こうやって、こうやって、つくるのよ:農耕民アリの女性職人による土器づくりの習得過程」第21回日本霊長類学会大会公開シンポジウム、2005年7月2日、於倉敷市芸文館・別館1階「アイシアター」.


写真

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ある世帯の台所。アリの人々は、写真のようにたくさんの土器を所有し、特定の部位の大きさ別に土器を使い分けている。この家庭には13種類の土器があり、夫人は調理する素材別、調理する料理別、食事をする人数や行事別に土器を使い分けている。

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土器を成形する職人とそれを見守る彼女の夫。アリ地域ではマナとよばれる職能集団の女性が専門に土器を製作している。彼女たちは、幼いうちから土器づくりをまなびはじめ、ある程度製作できるようになると、結婚して世帯の生計の主たる担い手となる。

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土器職人たちは、自分の製作した土器を地域の定期市で直接利用者に販売する。土器などの生活用品や家畜は、おおよその相場が決まっているが最終的な値段は、交渉によって決まる。客は安く買いたたこうし、職人は決して客の提示した値段では売ろうとせず、しばしばケンカ別れになる。写真は、その交渉の場面で両者がにらみあっているところ(写真左が客、右が職人)。

アジスアベバで普及しはじめたエレクトリックミタッド(電気インジェラ焼き器)、2007年8月撮影(於Tさん宅)