(3) 報告者はこれまでの調査において、国立公園周辺の農村景観が農村や森林周辺に生息する鳥類の生息状況に与える影響を調査し、住民の生業活動の違いに起因する村落内の資源分布の変化が鳥類の種分布を変化させていることを明らかにした。具体的には、薪炭林の伐採や換金作物の栽培面積の拡大、さらには土地の所有権や土地利用変遷が、地域生態系の現状と深く関わっていることが示唆された。
今回の調査は、生業活動や農法の違いがみられ、国立公園に隣接する複数の村落で、鳥類の生息調査を行った。併せて村落の社会経済状況の概
要を把握するためのインタビューを行った。本調査時期は、鳥の渡りの季節であったため、地域に定住する鳥類以外の渡り鳥による環境利用にも着目した。
今回の調査では、村落の住民が日常の生活においてどのように鳥類を認識し、鳥類を利用しているかについて調査を行い、鳥類の生息状況の現状を説明する副次的要因の抽出を試みた。調査は、これまで鳥類の生息調査を行ってきた調査地で、住民に対して、野鳥に関する知識、認識、捕獲の経験、捕獲後の利用方法に関するインタビューを行った。その結果、住民は、鳥類を食用や飼育のために時々捕獲する程度であることがわかった。鳥類の捕獲は、10代〜20代前半の男性によって行われることが多く、捕獲方法は、捕獲者の年齢や捕獲目的によって違いがみられた。村落周辺に生息する小型の鳥類が対象である場合には、巣から幼鳥や成鳥を捕獲する方法が多くとられた。中型・大型の鳥類を捕獲する場合には、銃器が用いられ、食用にされることが多かった。
今後は、現在の鳥類相の現状に影響していると考えられる過去の捕獲の履歴に関しても、分析をすすめていく。