第4章では、インタビュー調査について考える。聞き取り記録は、読み物としてはおもしろいが、いざ論文とするためにはどうすればよいかわからなくなるものである。本章で題材とした論文において論文筆者は、参与観察や聞き取り記録だけでなく、自らが商売人として商売に従事し、その実践の中で得られた理解をもとに論を進める。曖昧で矛盾に満ちた聞き取り記録をさまざまな側面から検討することで、はじめて、筋の通った理解に到達することができることを示す。
第5章は、学際的研究について考える。フィールドワークによる研究は、すべからく学際的研究にならざるを得ない。というのは、現実の人間社会はさまざまな要因が複雑に絡み合うだけでなく、現在進行形で変化しており、それを理解するには、どうしてもさまざまな(専門分野)ディシプリンを超えて考察することが必要になるからである。学際的研究の第一歩に何が必要なのかを考える。
第6章と第7章では、サーベイ型調査と事例研究について考える。質問表調査のように、できるだけ広域から多数のサンプルを選んでデータを取得するサーベイ型調査のスタイルと、事例研究のように、定点で長期間滞在し、事例の数は少ないものの、その事例に関するさまざまなデータを取得する調査のスタイルは、データの取得方法から見れば、両極端にある。
まず第6章では、サーベイ型調査について考える。広域に分布する多数のサンプルからデータを取得するサーベイ型調査の本質は比較にある。多数のサンプルを比較することに由来するメリットとデメリットについて考え、デメリットを克服するための工夫について考える。
第7章では、事例研究について考える。事例研究とは、事例そのものの問題に答えることを目的とした研究ではなく、事例の深い理解を通じてより一般的な問題に答えることを目的とした研究である。事例のための研究ではなく、事例研究であるための工夫について考える。
最後に第8章では、ある特定地域を対象にしたフィールドワークによる研究から、より汎用性の高い一般的なモデルを構築するプロセスを取り上げる。個別の事例で得られた知見を、世界の多くの人に向けて発信するための工夫について考える。 |