2005年
9月号

  9月に入っても厳しい残暑がつづくなか、9月15日に本年度第4回目、通算30回目の執行会議が開催されました。執行会議ではまず、予算の執行状況についての報告がありました。また今年度予算に計上されている研究成果出版の希望者を公募することが成果等推進部会長の小杉教授からアナウンスされました。

  つづいて21世紀COEプログラムで出版を助成した北ケニアの牧畜民サンブルの装身具に関するモノグラフ “Adornments of the Samburu in Northern Kenya” についての報告がありました。著者は、アジア・アフリカ地域研究研究科の中村香子さん。大学院入学以来つづけてきたサンブル社会についての調査をもとに、性及び年齢階梯によって異なるサンブルの装身具合計6,520点に関するデータをもとに、合計167種類の装身具(及び5種類の身体変形)について、それぞれの現地名とその語源、形態とサイズ、色彩、素材と作製法、入手経路、使用者の性と年齢階梯、それらが付けられる身体部位と装着方法、それらの社会的、儀礼的な意味、などについて網羅的に記載したものです。巻末には多数の美しい写真が添えられています。本書は、東アフリカの牧畜民が身につける多種多彩な装身具についての世界最初の本格的なモノグラフとして高い価値をもつものです。冒頭で著者は、「物的対象はそれを伝って社会関係が流れる鎖であり、物質文化が単純なほど、それによって表現される関係の数は多くなる」というエバンズ=プリチャード(Evans-Pritchard)の言葉を引用していますが、本書によって読者は、むしろ一見単純にみえる物質文化がいかに細部において差異化されているかに驚かされることでしょう。

  出版関連ではこのほか、本プログラムが助成した「アラビア語定期刊行物第三巻」についての報告が小杉教授からありました。来年度に終了する本プログラムはそろそろまとめの段階に入っており、今後もこのような形でひきつづき大学院生の研究成果や、地域研究に関する資料の公表を支援していきたいと考えています。

  また、今年の11月23〜24日にタイのバンコクで開催される国際シンポジウム「地球・地域・人間の共生―フィールド・サイエンスの地平から―」(Coexistence with Nature in a ‘Glocalizing’ World: Field Science Perspectives)について、実行委員長の平松教授から準備の進捗状況に関する説明がありました。8月にHPの立ち上げを終え、英語のポスターも完成したとのこと。今後は、予算関係の詰めを大学本部事務局との間ですすめるとともに、プロシーディングスの作成を急ぐことになります。なお、シンポジウムには総長もしくは国際交流担当の副学長が出席の予定ということです。

  最終年度の国際シンポジウムについては、幹事役の高田助手から、夏休み期間中に何回かワーキング・グループの会議を開催し、4つのセッションとフィールド・ステーションの活動を紹介するポスター・セッションからなるシンポジウムの構成の概略と、それぞれのセッションの担当者について決めたという報告がありました。最終年度に開催するシンポジウム「総合的地域研究の発展と課題―地球・地域・人間の共生をめざして」(Developments and Prospects of Integrated Area Studies: In the Path of Human-Nature Coexistence in a Glocalizing World)は本プログラムの締めくくりとなるものですが、「先導的な地域研究者の養成」という21世紀COEプログラムの趣旨を踏まえ、これを若手教員・研究者、大学院生が中心となって組織し、彼らの研究成果を世界に向けて発信する機会とすること、また執行会議はそれを全面的にバックアップすることが再確認されました。

  また、このシンポジウム準備のために非常勤職員を1名募集することが了承されました。この非常勤職員には、現在、産休をとっている職員にかわって来年2月まではCOE事務局の補佐を併せてお願いすることになります。

  広報部会からは7月の執行会議以降のHP更新状況が報告されました。主な更新は、統合情報化部門の英文ページ、とくに東南アジア地域の地形図(Southeast Asian Topographic Map Database)、アフリカにおける野生植物利用に関するデータベース(Aflora)、地域研究画像データベース(Area Studies Image Database)などの紹介と、FS部門の年次報告などです。また、大学院生などが作成した民族誌映画の一部などの動画の配信準備も整ったということです。今後はこうした統合情報化部門の活動を、平成18年度設置に向けて現在概算要求中の「地域研究統合情報センター」と、どのようにリンクさせていくかが課題になるでしょう(文責=市川)。

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