1)トラディショナル・ダンサーである
Uncleは実際、トラディショナル・ダンサー、つまりはウガンダに暮らす多様な民族が儀礼などの場でおこなってきた舞踊を披露し、お金を稼ぐ人だった。トラディショナル・ダンスは、外国人が来るような高級ホテルやレストラン、国家規模の祝賀会、民衆の結婚式などで披露される。いずれの場合もダンサーを呼ぶ人(ホテルやレストランのオーナー、結婚式の主催者など)が報酬をダンサーに渡すようだが、観客の目の前で、例えばガンダ民族特有の腰振りをすると、その舞を楽しんだ観客はお金をダンサーの汗ばんだおでこに貼り付けたり、ダンサーの手に握らせることもある。
私は何度かUncleの踊りを見に行き、彼のすばらしい声量と声質、どこまでも高くあがる足、すばやくしゃがみこむ足の筋力にほれぼれした。しかし、彼はトラディショナル・ダンサーという職だけで食べているわけではなかった。トラディショナル・ダンサーとして働くのは月数回で、主には専門学校のようなところで、ダンスのインストラクターとして働き、住まいとして人に貸せる部屋を有する長屋の管理もしていた。かといって多くを稼いでいるわけでもなく、彼自身の寝場所は3畳もない長細い部屋にマットを敷いて、ほかに毛布、ラジオのみといったところ。毎朝、Uncleは私の予定を聞くので、私も聞き返す。すると時々「今日は貧乏だからどこにもいかない、この辺にいる」とこたえる。私が新聞(1,000ウガンダシリング≒60円)を買うと、ちょっと読ませてと言って、持って行き、自分で買うことはない。
踊る仕事は急に入る。前日、Uncleは部屋の隅から、踊るときに腰にまく衣装を出してきて、それをはさみで丹念に切りそろえる。踊り終えたUncleはとても疲れている。「踊っているとき吐きそうだった」と話す。帰る途中で売店に寄ってソーダを買い、その場で飲む。「あれだけ踊って、これだけしかもらえなかった」と報酬についてぼやく。息に疲労をにじませながらも、今度は私にカンパラで気をつけなければならないことについて教えてくれる。カンパラは赤道直下に位置するが標高が高いため夜は冷える。そんな少し寒い夜に売店の前に並べられた椅子に腰掛けて、ソーダを片手に、私はUncleの声に耳を傾ける。
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レストランで舞うトラディショナルダンス
ウガンダダンスアカデミーのダンサーたち |