研究者紹介
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川瀬 慈Itsushi Kawase 研究テーマ「地域社会と音楽のかかわり〜エチオピアの吟遊詩人アズマリとラリベロッチの 音楽実践」 エチオピア高原には、単弦楽器マシンコを奏で唄うアズマリ、早朝に家々の軒先で合唱を行うラリベロッチと呼ばれる吟遊詩人集団がいる。この両者は音楽演奏の形態は異なるものの、古くからエチオピアの地域社会に深く根をおろし活動を行ってきた。本研究では、音楽とその担い手を地域社会の諸相を映し出す鏡としてとらえ、人と音楽の関わりを通し地域社会の動態的な把握を行っていくことを目指す。 写真1. 祝祭儀礼とアズマリ - エチオピア高原の古都ゴンダールの祝祭儀礼にアズマリは欠かせない存在である。アズマリは、馬の尾を束ね合わせた弦、山羊の皮を張った共鳴胴からなる楽器マシンコのメロディに、聴衆を褒め称える内容のうたをのせ、儀礼の進行を司る。写真は聴衆から額に紙幣を受け取り、誇らしげに歌うアズマリ。新郎新婦の到着を待つ結婚式会場において。- 2004年4月25日, ゴンダール 調査の概要調査地:ゴンダール
調査歴:2001年9−12月、2002年6−12月、2003年10月−2004年9月(予定) 吟遊詩人たちの (1) 社会集団としての特質 [*婚姻関係*内部カテゴリーの動態*共有する隠語*移動とネットワーク*外部集団との社会関係] (2) 音楽演奏の分析 [*演奏が行われる社会的状況と意義*演奏形態の特徴*オーディエンスとのやり取り*うたのテクストにみられる「蝋と金」と呼ばれるメタファー技法] (3) 対話を中心に展開する民族誌映画の作成、など。 写真2. 憑依儀礼とアズマリ - 病気の治癒を目的としたザール憑依儀礼において演奏するアズマリ(右端)。ザールにおけるアズマリの演奏は、コレと呼ばれる精霊の呼び寄せ、霊媒を通してなされる宣託の復唱、などの役割を担う。中央の女性は憑依のきざしとされる上半身の痙攣“グリ”を行う。ゴンダールのザールはM.レリスの紹介によってよく知られる。- 2004年4月8日, ゴンダール郊外アゼゾにて 業績学術論文: "Musical activities of Azmari in Gondar and their self-designation" Proceedings of the 15th International Conference of Ethiopian Studies (forthcoming). 2005 "Musical performance and self-designation of Ethiopian minstrels: Azmari", in African Study Monographs Supplementary Issue 29, Environment, Livelihood, and Local Praxis in Asia and Africa, eds. Shigeta, M. & Y. Gebre. 2003 「エチオピアの吟遊詩人アズマリの音楽実践をめぐる諸相」(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文) 辞書: "Enzata", In Siegbelt Uhlig (ed.), The Encyclopaedia Aethiopica vol.2, Harrasowitz Verlag・Wiesbaden, 2005, p327-328. Itsushi Kawase - Mesffin Messelle, "Lalibalocc", In Siegbelt Uhlig (ed.), The Encyclopaedia Aethiopica vol.3, Harrasowitz Verlag・Wiesbaden (forthcoming) 書評: 2003 「書評: Kay Kaufman Shelemay. Soundscapes. Norton, 2001」『アジア・アフリカ地域研究』第3号, p258. エッセイ(ウエブページ): 「エチオピアの音楽職能民ラリベロッチとアズマリ」, エチオピアフォーラム, 2003年2月. 映像作品: 1,『僕らの時代は』53分 2005年 カラー DV (英語版)Kids got a song to sing 2,『ラリベロッチ-終わりなき祝福を生きる-』24分 2005年 カラー DV (英語版)Lalibaloch- Living in the endless blessing- 映像作品1 上映歴 第13回現代中東イスラム世界・フィールド研究会 2005年9月 京都人類学研究会12月季節例会 2005年12月 映像民俗学の会 新宿 2005年11月 Asien-Afrika-Institut, University of Hamburg 2006年1月 Institut fur Linguistik, University of Cologne 2006年1月 映像作品2 上映歴 日本ナイル・エチオピア学会第14回学術大会 長野県千曲市戸倉創造館, 2005年4月 日本アフリカ学会第42回学術大会『映像フォーラム』 東京外国語大学, 2005年5月 平成17年度日本エチオピア協会総会 JICA広尾 2005年6月 インディーズフィルムフェス2005 長野市 松本市 2005年10月 Department of Languages and Cultures of Africa, University of Leiden 2005年10月 The Society for Ethnomusicology, 50th Annual Conference, Atlanta, Georgia 2005年11月 Department of Music, Harvard University 2005年12月 学術発表: 「エチオピアの音楽職能民アズマリの民族誌にむけて」, 第11回日本ナイル・エチオピア学会学術大会, 岩手県牛の博物館, 2002年4月. "Aspects of Azmari performance in several social occasions in North Gondar", 15th International Conference of Ethiopian Studies, Hamburg, July 2003. "Musical performance and self-designation of Ethiopian minstrels: Azmari", International Workshop on Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa, Addis Abeba, October 2003. "Sociolinguistic aspect of Azmari and Lalibalocc: the argot as a self-imposed group marker", International Conference on Endangered Language of Ethiopia, (Addis Ababa University, Apr. 2005) 写真3. アズマリベット - 昨年ゴンダールに初めてオープンしたアズマリ演奏専門の店、アズマリベットに於けるアズマリの夫婦。アムハラ地方の農村をモチーフにした生活用品の展示、農夫のコスチュームなど、都市のアズマリベットは“いなかの生活への憧憬”をイメージとして押しだす傾向にある。外国人観光客も頻繁に訪れる。- 2004年4月10日, ファシカ(イースター)前夜のゴンダールにて 写真4. 映像を介した調査 - ビデオカメラによって撮影した映像を再生し、被写体となった人々へ直接見せて、調査者の分析と、被調査者の見解を比較する。彼らとの対話を中心に分析を行い、それを事例研究として積み重ね、人々の行動や認識について探る。写真は自分たちの演奏場面の映像をみるアズマリの少年たち。- 2004年4月22日, ゴンダール 川瀬宅にて 写真5. ラリベロッチ - 民家の軒先にて斉唱を行うラリベロッチ夫妻。祝福の言葉を人々に与え、喜捨を受け取る。その発声法やメロディパターンは、中東の音楽様式を想起させる。ハンセン病患者の音楽集団、音楽活動をやめるとハンセン病を患う集団などといわれてきたが、彼らの出自や行動様式については謎が多い。- 2004年5月11日, ゴンダール・/p> |
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