研究概要
研究テーマ: 「アフリカの牧畜社会における家畜−人間関係の諸相、および社会の変容に関する研究」
アフリカの乾燥地域にひろがる牧畜社会を対象として、家畜−人間関係の諸相を人類学の立場から探究しています。具体的には、家畜の社会行動とそれに対応する放牧管理の技術、家畜の体色や角などの分類や個体識別をめぐる認識体系、家畜の病気の認識と対処、そして家畜の所有・贈与・交換のしくみなどを調査してきました。現在はまた、経済や政治のグローバル化という状況のもとで、家畜を飼うことと深く結合した文化を育んできた人びとの社会が、いま、急速に変化しています。人びとの生活はどのように変容しているのか、人びとは激動する社会環境をどのように把握し、どんなふうに対処しようとしているのかを見とどけることも、わたしの大きな研究テーマのひとつです。
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主な業績:
- Ohta, I. (in press) "Coexisting with Cultural 'Others': Social Relationships
between the Turkana and the reugees at Kakuma, Northwest Kenya." In (K. Ikeya
and E. Fratkin, eds.) Pastoralists and Their Neighbors in Asia and Africa. Senri
Ethnological Studies, No. 69. Osaka: National Museum of Ethnology.
- Ohta, I. 2005. "Multiple Socio-Economic Relationships Improvised between the
Turkana and Refugees in Kakuma Area, Northwestern Kenya." In (I. Ohta and Y. D.
Gebre, eds.) Displacement Risks in Africa, pp. 315-337. Kyoto: Kyoto University
Press.
- Gebre, Y. D., and I. Ohta, 2005. "Introduction: Displacement in Africa -
Conceptual and practical concerns -." In (I. Ohta and Y. D. Gebre, eds.)
Displacement Risks in Africa, pp. 1-14. Kyoto: Kyoto University Press.
- Ohta, I. and Y. D. Gebre (eds.) 2005. Displacement Risks in Africa:
Refugees, Resettlers and Their Host Population. Kyoto: Kyoto University Press.
394pp.
- 太田至、2004「アフリカの『難民問題』を考える:国際シンポジウムの報告」『JANESニュースレター』12: 35-39.
- 太田至、2004「家畜という資源:等価性と外部性を考える端緒として」文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究『資源人類学』総括班(編)『資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築−象徴系と生態系の連関をとおして(中間成果論集)』資源人類学総括班、pp.
324-328.
- Tachiiri, K. and I. Ohta, 2004. "Assessing impact of a large-sized refugee
camp on the local vegetation condition using remote sensing: A case study of
Kakuma, Kenya." Proceedings of the 2004 IEEE International Geoscience and Remote
Sensing Symposium, III, Geoscience and Remote Sensing Society (Anchorage, Sept.
20-24, 2004), pp. 1547-1550.
- 太田至、2004「牧畜社会研究のおもしろさ」田中二郎他(共編)『遊動民(ノマッド)−アフリカに生きる』昭和堂、pp. 271-288.
- 太田至、2004「トゥルカナ社会における婚資の交渉」田中二郎他(共編)『遊動民(ノマッド)−アフリカに生きる』昭和堂、pp. 363-392.
- 田中二郎・佐藤俊・菅原和孝・太田至(共編)『遊動民(ノマッド)−アフリカに生きる』昭和堂 、711pp.
- 太田至、2003「『難民問題』に対する総合的アプローチの可能性:国際シンポジウム『アフリカの「難民問題」を考える』」『アフリカ研究』63: 37-41.
- 太田至、2002「家畜の個体性と商品化:東アフリカの牧畜民は資本主義者か」『アジア・アフリカ地域研究』No.2: 306-317.
- 太田至、2002「家畜と貨幣:牧畜民トゥルカナ社会における家畜の交換」佐藤俊(編)『遊牧民の世界』京都大学学術出版会、pp. 223-266.
- Ohta, I. 2001. "Motivations, negotiations, and animal individuality:
Livestock exchange of the Turkana in northwestern Kenya." Nilo-Ethiopian
Studies, No. 7: 45-61.
- 太田至、2001「『われわれ』意識の乖離と重なり−ナミビアにおけるヒンバとヘレロの民族間関係」和田正平(編)『現代アフリカの民族関係』明石書店、pp164-187.
- Ohta, I. 2000. "Drought and Mureti's grave: The 'we/us' boundaries between
Kaokolanders and the people of Okakarara area in the early 1980's." In (M.
Bollig and J. Gewald, eds) People, Cattle and Land: Transformations of a
Pastoral Society in Southwestern Africa, pp. 299-317. Cologne: Rudiger Koppe
Verlag.
- 太田至、1998「アフリカの牧畜民社会における開発援助と社会変容」高村泰雄・重田眞義(共編)『アフリカ農業の諸問題』京都大学学術出版会、pp.
287-318.
- 太田至、1997「カオコランドから見た『部族主義』と『人種差別』」『月刊アフリカ』37(10): 18-23.
- 太田至、1996「ナミビア北西部のカオコランドに住むヘレロとヒンバのエスニック・バウンダリーの動態」『アフリカ研究』48: 115-131.
- 太田至、1996「規則と折衝−トゥルカナにおける家畜の所有をめぐって−」田中二郎他(共編)『続・自然社会の人類学』アカデミア出版会、pp.
175-213.
- 田中二郎・掛谷誠・市川光雄・太田至(共編)『続・自然社会の人類学』アカデミア出版会、京都、441pp.
- 太田至、1995「家畜の群れ管理における『自然』と『文化』の接点」福井勝義(編)『地球に生きる:自然と人間の共生』雄山閣、pp. 193-223.
- 太田至、1993「コリンターンブルが実践してきた人類学と文化批判について」(コリン・ターンブル著、『豚と精霊』どうぶつ社、訳者あとがき)pp.
328-342.
- 太田至、1993(翻訳)『豚と精霊』コリン・ターンブル著、どうぶつ社.
- Ohta, I. 1993. "Tradition vs modernization" dualism in the study of African
pastoral societies." JANES Newsletter, 1: 2-5.
- 太田至、1993「トゥルカナ」綾部恒雄(監修)『世界の民、光と影(下)』pp. 84-93、明石書店.
- 太田至、1991「トゥルカナの家畜をめぐる病気観」田中二郎・掛谷誠(共編)『ヒトの自然誌』pp. 295-321、平凡社.
- Ohta, I. 1989. "A classified vocabulary of the Turkana in northwestern
Kenya." African Study Monographs, Supplementary Issue 10: 1-104.
- 太田至、1989「フィールドワークについて思うこと−経験・表現・方法−」『季刊人類学』20(3): 78-91.
- 太田至、1989「アフリカの牧畜:家畜の所有と移籍をめぐる諸問題を中心に」海外学術調査に関する総合調査研究班(編)『東南アジアとアフリカ:地域間研究へ向けて』pp.
123-140.
- 太田至、1988「1988年の雨季、そして『文明』の足音−ケニア北西部のトゥルカナ地方−」『アフリカ研究』33: 89-92.
- 太田至、1988「人間と生業対象のかかわり方の意味」『季刊人類学』19(2): 17-25.
- Ohta, I. 1987. "Livestock individual identification among the Turkana: The
animal classification and naming in the pastoral livestock management." African
Study Monographs, 8(1): 1-69.
- 太田至、1987「家畜の「個体性」の認知、およびその意味についての試論」和田正平(編)『アフリカ−民族学的研究−』pp. 817-827、同朋舎、京都.
- 太田至、1987「家畜の個体名はいかに付与されるか−北ケニアの牧畜民トゥルカナ族の事例より−」和田正平(編)『アフリカ−民族学的研究−』pp.
787-816、同朋舎、京都
- 太田至、1987「牧畜民による家畜群の構造的把握法−北ケニアのトゥルカナ族の事例より−」和田正平(編)『アフリカ−民族学的研究−』pp.
771-786、同朋舎、京都.
- 太田至、1987「トゥルカナ族の家畜分類とそれにともなうハズバンドリーの諸相」和田正平(編)『アフリカ−民族学的研究−』pp.
731-769、同朋舎、京都.
- 太田至、1987「人−動物間の相互交渉としての家畜管理−
隠岐西ノ島における家畜飼養の事例から」福井勝義・谷泰(共編)『牧畜文化の原像−生態・社会・歴史−』pp. 283-330、日本放送出版協会、東京.
- 太田至、1986「トゥルカナ族の互酬性−ベッギング(物乞い)の場面の分析から−」伊谷純一郎・田中二郎(共編)『自然社会の人類学−アフリカに生きる−』pp.
181-215、アカデミア出版会、京都.
- Ohta, I. 1984. "Symptoms are classified into diagnostic categories:
Turkana's view of livestock diseases." African Study Monographs, Supplementary
Issue 3: 71-93.
- 太田至、1982「牧畜民による家畜放牧の成立機構−トゥルカナ族のヤギ放牧の事例より−」『季刊人類学』13(4): 18-56.
- Ohta, I. 1982. "Man-animal interaction complex in goat herding of the
pastoral Turkana." African Study Monographs, Supplementary Issue 1: 13-41.
- 太田至、1981「放牧のなりたち」『アニマ』102: 13-18.
- Ohta, I. 1980. "Property unit and nomadic unit of the Turkana." In
(J. Tanaka, ed.), A Study of Ecological Anthropology on Pastoral and
Agrico-Pastoral Peoples in Northern Kenya, pp. 55-77, Inuyama: Kyoto University
Primate Research Institute.
- 太田至、1980「トゥルカナ族の家畜所有集団と遊動集団」『アフリカ研究』19: 63-81.
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略歴
(学歴)
| 長野県生まれ |
1972 | 長野県立長野高等学校卒業 |
1976 | 京都大学理学部卒業 |
1978 | 京都大学大学院理学研究科修士課程修了 |
1984 | 京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学 |
1986 | 京都大学理学博士 |
(職歴)
1984 | 京都大学理学部・研修員 |
1986 | 京都大学アフリカ地域研究センター・助手 |
1989 | 京都大学アフリカ地域研究センター・助教授 |
1996 | 京都大学大学院人間・環境学研究科・助教授 |
1998 | 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・助教授 |
2004 | 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授 |
学会活動
1981 | 日本アフリカ学会 |
1985 | 日本民族学会 |
1985 | 日本霊長類学会 |
1992 | 日本ナイル・エチオピア学会 |
1996 | 生態人類学会 |
調査地
- ケニア共和国(北西部、ウガンダ・スーダン・エチオピアの国境近く)
- ナミビア共和国(北西部、アンゴラとの国境近く)
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