ひるごはん
練習の合間にパフォーマーたちが食べる
なかなかおいしい
練習中?
カメラを渡すと、好き勝手にポーズをとっては何枚もパチリ |
「私は黒いけど人間なのよ、質問したら?」
調査の一環として、カリオキ・ショーをするパフォーマーたちにも話を聞こうと、私はインタビューを試みた。かれらは、10代後半から20代前半の若者たちで、多くの場合15人前後でグループを形成して活動していた。ほとんど私より年下であるパフォーマーは、ステージの上はもちろん、ステージを降りても実にカッコイイ。耳に光る銀色のピアス、ラフに着こなすトレーナー、すこし斜めにかぶる帽子、かれらの姿には日常を少し楽しくするおしゃれなアイテムがちりばめられている。ただし女性陣は、少しこわい。彼女たちはほぼ全員英語ができる。しかし、ダンスを練習しているレストランや、かれらが「ゲットー」と呼ぶ4畳ほどの狭い住居に突如としてやってくる私に、男性メンバーと違ってあまり気を遣う様子はない。彼女たちは相手をどきりとさせる色っぽいまなざしのつくり方や、色気がただよう歩き方など自分の魅せ方をよく知っているが、媚びることはしない。上記の一言は、私があまりにもメンバーの勢いに気圧されて質問できないでいる時に、グループリーダーの二十歳の女性が言ってきた言葉だ。つまりは「質問してちょうだいよ、なんでも応えるわよ」という意味なのだが、思わずびくっと背筋が凍る。
あるグループにくっついてショーをおこなう場所に初めて行ったときだった。まだかれらと出会って2度目だった。その夜は、14人乗りの乗り合いタクシーを借り切って、グループのメンバー13人と衣装が入った袋、そしておどおどしている私が乗り込んで練習場所にしているレストランから公演場所のバーへと向かった。乗り込んだ女性メンバーたちのテンションは高い。ビニール袋に入れたビールをストローで吸いながら、笑い声を飛ばす。会話は私が理解できないガンダ語。でもガンダ語というより、ほぼ悲鳴に近い彼女たちの言語。途中、交差点で車のスピードが落ちたとき、隣を走る乗り合いタクシーの運転手に向かって、卑猥な言葉を投げつける。運転手がいらついて手をあげようとすると、急いで車の窓を閉める。そして笑いあう。プラスチックのタッパーに入ったシチューがけご飯は、彼女たちのあいだで何度も行き来した。時には、私のことを言っているのだろう「ムズングmuzungu(白人、外国人)」という言葉も聞こえてくる。すぐ後ろにいる彼女たちを私はとてもじゃないが振り向けなかった。
会場に着くと、彼女たちは自分たちのペースで、男性がいるとかいないとかに関係なく着替え始め、割れた鏡の破片を片手に化粧と髪形を整えていく。ショーが始まる。舞台上の仲間を眺めながら待機する。自分の番になるとあせるでもなく、「ま、いきますか」といった雰囲気の駆け足で舞台へ向かう。なんとか少しでも彼女たちと会話をしたい。そう思った私は、待機中の女の子に話しかける。
「はじめまして」
すると、
「もう会ったことあるでしょ」 と返される。
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