--プログラムの進捗状況 --
2002年〜2003年度
■I 本プログラムの概要 ■II 2002年〜2003年度の進捗状況 ■III 活動実績
■IV 総括
 I 本プログラムの概要
 

1) プログラムの目的と特色
  本計画は、京都大学におけるアジア・アフリカ地域に関する長年の臨地研究の蓄積を踏まえて先端的な地域研究を推進させ、そこに大学院教育を有効に組み込むことにより世界を先導する総合的地域研究・教育の拠点形成を目指す。グローバル化のもと、地域社会と地球社会との接点が拡大・多様化するなかで、環境問題や南北問題等に見られるように、〈世界〉と〈地域〉の間の相克が先鋭化しつつある。これら現代世界を取り巻く諸問題の多くは、社会と自然が絡み合う複合的な問題群であるが、これまでは社会科学と自然科学に分けて対処しようとしてきた。こうした状況のなかで、真に持続可能な地球社会の発展の方向性を打ち出し、アジア・アフリカを含む諸地域の自立と世界の共存、さらには自然と人間の共生を可能にする新たな秩序を構想するうえで、生態、社会、文化が歴史的に交差する場である〈地域〉に関する文理融合的な知の蓄積が急務であり、そのための研究・教育拠点の形成が不可欠である。
  地域研究を標榜する世界の研究機関としては、連合王国のSOAS(ロンドン)やオランダのCNWS(ライデン)などがあるが、それらの多くは歴史学・政治学・経済学・社会学・人類学などの人文社会科学系が中心であり、本拠点のように文理融合的アプローチにより、地域間比較をも企図した総合的地域研究(Integrated Area Studies、略称IAS)を推進するところはきわめて少ない。また、本拠点は、フィールドワークを重視しながら、基礎研究と実践的関心の融合を図ること、先端的研究と現場における教育との融合を目指すものとしても、きわめてユニークである。

2) 期待される成果
  本拠点は、アジア・アフリカの各地に設置するフィールド・ステーション(FS)を核として、文理融合的なアプローチ、教育と研究の融合、基礎研究と実践的関心の結合、アジア・アフリカの地域間比較などを柱とする総合的地域研究を推進し、統一テーマ「地球・地域・人間の共生」のもとで、〈地域〉に関する新しい〈知〉の創出を目指すものである。同時に、地域研究に関する多元的情報の収集・整理・発信、および国内外の研究機関とのネットワーク形成のために「地域研究統合情報化センター」を設立し、これらの活動を支援する。FS及び地域研究統合情報化センターの機能を統合することによって、世界を先導する総合的地域研究拠点の形成を実現させる。
  これまで地域研究の中心であったアメリカなどは、国家戦略の変化にともない、地域研究を縮小している。そのため、アジアにおける地域研究の拠点形成と研究・教育のネットワーク化は、これからのアジア、アフリカを考える上できわめて重要である。また国内外の多くの地域研究機関による研究は人文社会科学分野が中心であり、地域の全体像を把握するための文理融合的なアプローチはきわめて不十分である。本計画の成果として、地域研究における研究・教育の高度化や文理融合の促進をはじめ、開発援助、自然保護、民族紛争などアジア・アフリカ地域が抱える多様な問題に総合的な観点から柔軟に対応しうる地域の専門家の養成や、これらの問題に対する地域研究の知見の社会的還元などが期待される。

 II 2002年〜2003年度の進捗状況
 

1) 運営状況
  本計画はこれまで、(1)フィールド・ステーション(FS)の設置とFSを利用した臨地教育・研究体制の推進、(2)臨地教育・研究支援のための、多元的情報の整備と発信を担う「地域研究統合情報化センター」の設置準備(平成16年度4月設置予定)、(3)統一テーマ「地球・地域・人間の共生」のもとでの(1)(2)の資源・活動の統合と、統一テーマに沿った4つの問題群に関する研究・教育、という3つの柱に沿って推進されてきた。(1)(2)を中心とする運営状況は以下のとおりである。(3)については、「III 活動実績」を参照されたい。

(1)フィールド・ステーション部門
  FSに関しては、これまでの2年間に、延べ27名の教官、52名の大学院生、3名の若手研究者がラオスミャンマーインドネシアエジプトタンザニアエチオピアカメルーンザンビアケニアなどに派遣され、本計画の遂行にあたった。すなわち、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科と東南アジア研究センターがこれまでに推進してきたさまざまなプロジェクトの調査拠点に、MOUなどを活用しつつ14FSを設置・整備し、統一テーマにそった文理融合的研究、および大学院生に対するオンサイト・エデュケーションを推進してきた。また、FSを活用して当該地域の教育研究機関と双方的かつ多中心的な研究・教育ネットワークを形成し、共同研究やワークショップの実施、現地語の図書や政府刊行物資料などの収集と整理・発信をおこなった。
  平成15年度には、エチオピア、アジスアベバ大学との共催によって、地域間比較を目的としたワークショップ「環境と生業をめぐる地域住民のとりくみ」を開催し、FSにおける活動の成果を発信した。さらに、カメルーンにおける熱帯雨林保護に関する現地セミナーの開催(WWF, GTZ, MINEFとの共同開催)、インドネシアにおける現地ワークショップ「インドネシアの地方社会のミクロロジー」の開催など、FSを活用した共同研究の推進と研究成果の発信に努めている。
  これらの活動を通して、アジア・アフリカ地域のFSを拠点として、現場における第一線の研究と教育を融合させながら推進する体制が我が国ではじめてスタートすることになった。アジア・アフリカ地域に関する植民地時代の資料などの蓄積が乏しい我が国の研究者が、地域研究の分野で世界の先端に立つには、自ら収集した一次資料や現場体験にもとづく研究が有効であり、FSを拠点とした臨地教育・研究の推進によって、その体制が確立されることになる。

(2)統合情報化部門
  統合情報化関係では、FSにおける教育・研究に対する支援と、国内外の地域研究に関する情報及びネットワークの拠点としての機能をあわせもつ「地域研究統合情報化センター」(仮称)の設立準備をすすめるとともに、この新しいセンターが担うことになる様々な機能を具体化する作業をおこなってきた。これまでの主な実績としては、まず、情報・ネットワーク関係では「地域研究統合情報化センター」を結節点とする各種のコミュニケーション・モジュールの核となるサーバーの導入や、フィールド・ステーションおよび学内外の研究者、学生との円滑なコミュニケーションをはかる機器等の整備があげられる。研究資料の収集関連では図書7,500冊、マイクロフィッシュ1,500枚、マイクロフィルム600リールを購入するとともに、地域研究資料のデータベース化、デジタル化を推し進めた。
  また、出版物による広報を企図する代わりに、平成15年4月21日にはホームページを開設して21世紀COEプロジェクトの活動状況や教育研究成果等のリアルタイムな発信に努めるとともに、10月には当初計画を1年前倒しして、地域研究者間の情報交換と交流を促進する月刊メールマガジン『アジア・アフリカ地域研究情報マガジン』(通称IAS-INFOM)を発刊し、すでに6号(2004年2月現在)を発刊している。その他、多元的な地域研究資料・情報の統合的な蓄積、管理、公開のためのメタ・データベース・システムの開発をおこなった。これらの活動を通して、アジア・アフリカ地域に関する多元的資料の収集・整理・発信、及び国内外の研究機関及びFS等を結ぶ研究ネットワークの機能を有する、アジア最大の情報・ネットワーク拠点の形成に向けて着々と整備を進めるとともに、本計画の成果を国内外に向けて発信する体制が整備されつつある。
  さらに本計画では、統一テーマ「地球・地域・人間の共生」を設定し、これに関わる4つの問題群に沿った研究会を組織し、そこに臨地調査に携わる大学院生を効果的に参加させる仕組みを整えた。これまでに本計画の事業推進担当者が中心になって、合計50回の国内シンポジウム・研究会と、4回の海外ワークショップないしセミナーを開催してきた。今後は、臨地調査と研究会活動を連携させながらさらに成果を積み上げ、アジア・アフリカ地域研究における先導的研究者を育成していく計画である。

2) 今後の展開
  現在、アジア・アフリカ地域を合わせて合計14箇所のFSにおいて臨地研究・教育を推進しているが、今後はこれまでの活動内容、研究成果等の実績にもとづいてFSの数を絞って重点化するとともに、そこでの研究・教育の多角化、現地大学・研究機関との共同研究教育、国内他大学との共同利用等を進めていきたい。また、本計画による活動内容と成果についてHP等を利用して発信するとともに、メールマガジン「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」の発行等を通して情報ネットワークの整備をおこなっていきたい。さらに、平成16年度に設置する「地域研究統合情報化センター」を、アジア・アフリカ地域研究に関する情報およびネットワークの拠点として整備していきたい。このセンターは、京都大学内のアジア・アフリカ研究に関心をもつ関係部局・研究者を繋げて構築予定の「京都大学地域研究ネットワーク」の核として機能し、さらには国内外の地域研究関係諸機関を結びつける「地域研究グローバルネットワーク」の核となることを目指している。
  以上のような活動を通して、フィールドワークの拠点および情報・ネットワークの拠点として、アジアにおける最大の地域研究に関する拠点を形成しつつ、世界を先導する地域研究者の育成を図っていきたい。また、自然保護や開発、民族紛争、少数民族文化の保全といった、アジア・アフリカ地域が抱える切実な問題に対しても、地域に関する深い理解をもとにした問題の解明と対応法を模索するなど、研究成果の知的還元を図りたい。さらに、オンライン・ジャーナルや「地域研究統合情報化センター」に設けられる「エリア・インフォ交流室」を通して、アジア・アフリカ地域に関する一般の理解を深めることに貢献するなど、研究成果の社会的還元にも努めたい。

 III 活動実績
 

1) 事業推進担当者による主な発表論文・著書

  • 足立明 2003 「開発の記憶」『民族學研究』68(4): 1-12.
  • Yamaguchi, J. and Araki, S. (in print) Biomass production of banana plants in the indigenous farming system of the East African Highland: A case study on the Kamachumu Plateau in northwest Tanzania., Agriculture, Ecosystems and Environment 87.
  • 藤田幸一 2002 「制度の経済学と途上国の農業・農村開発‐政府・市場・農村コミュニティのはざまにて‐」『農業経済研究』74-2: 58-68.
  • Hayashi, Yukio 2003 Practical Buddhism among the Thai-Lao: Religion in the Making of a Region. Melbourne and Kyoto: Trans Pacific Press and Kyoto University Press.
  • Hayashi, Yukio and Aroonrut Wichienkeeo (eds.) 2002 Inter-Ethnic Relations in the Making of Mainland Southeast Asia and Southwestern China. Bangkok: Amarin Printing and Publishing.
  • 市川光雄 2003 「環境問題に対する三つの生態学」池谷和信編 『地球環境問題の人類学』 世界思想社、pp.44-64.
  • Terashima, H. and, M. Ichikawa 2003 A Comparative Ethnobotany of the Mbuti and Efe Hunter-gatherers in the Ituri Forest of DRC. African Study Monographs 24(1-2): 1-168.
  • 市川光雄 2002 「『地域』環境問題としての熱帯雨林破壊」 『アジア・アフリカ地域研究』2: 292-305.
  • 伊谷樹一 2002 「アフリカ・ミオンボ林帯とその周辺地域の在来農業」 『アジア・アフリカ地域研究』2: 88-104.
  • 池野旬 (印刷中) 「食糧不足の創造‐タンザニア、M県を事例に」 『アフリカの力』京都大学学術出版会
  • 池野旬 2003 「タンザニアの貧困削減政策をめぐって」 『アジア・アフリカ地域研究』3: 224-236.
  • Kato, T. 2003 “Images of Colonial Cities in Early Indonesian Novels” in Southeast Asia Over Three Generations: Essays Presented to Benedict R. O'G. Anderson, edited by James Siegel and Audrey Kahin, pp.91-123. Southeast Asia Program, Cornell University.
  • 加藤剛 2003 「開発と革命の語られ方‐インドネシアの事例から‐」 『民族學研究』67(4): 424-449.
  • Tomita, S., E. Nawata, Y. Kono, Y. Nagata, C. Noichana, A. Sributta and T. Inamura. 2003 Differences of weed vegetation in response to cultivating methods and water conditions in rainfed paddy fields in Northeast Thailand. Weed Biology and Management 3: 117-127.
  • Song, Xian Feng, Yasuyuki Kono, Koji Tanaka and Mamoru Shibayama 2003 Integrating Geographic Collection Database Repositories with a Z39.50-Compliant Gateway. Asian Journal of Geoinformatics 4(2): 31-36.
  • 小杉泰 2003 「啓典の支配力‐イスラーム政治の再登場」小杉泰他編〈アジア新世紀〉第7巻 『パワー‐アジアの凝集力』 岩波書店、pp.35-48.
  • 水野一晴 2003 「ケニア山における氷河の後退と植生の遷移 ‐ とくに1997年から2002年において‐」『地学雑誌』112(4): 608-619.
  • 水野一晴 2003 「ナミブ砂漠、クイセブ川流域の環境変化と植生遷移・植物利用」『アジア・アフリカ研究』3: 35-50.
  • 長津一史 2003 「周辺イスラームにおける知の枠組‐マレーシア・サバ州、海サマ人の事例(1950-70年代)『上智アジア学』20: 173-196.
  • 太田至 2002 「家畜と貨幣:牧畜民トゥルカナ社会における家畜の交換」佐藤俊編 『遊牧の世界』京都大学出版会、pp.223-266.
  • 太田至 2002 「家畜の個体性と商品化:東アフリカの牧畜民は資本主義者か」『アジア・アフリカ地域研究』2: 306-317.
  • 重田眞義 2003 「雑穀のエスノボタニー:アフリカ起源の雑穀と多様性を創り出す農耕文化」 山口裕文・河瀬真琴編 『雑穀の自然史』 北海道大学図書刊行会、pp.206-224.
  • Shimada, S. 2003 The impact of HIV/AIDS on agricultural production in Zambia., African Geographical Review 22: 73-78.
  • 島田周平 2003 「アフリカの「日常的環境破壊」‐農民が直面している環境問題」『地理』48(10): 48-57.
  • 白石隆 2002 「インドネシアの危機と東アジア地域秩序」慶応義塾大学地域研究センター編『変わる東南アジア、危機の教訓と展望』慶応義塾大学出版会、pp.3-40.
  • 杉島敬志 2002 「リオ語の『ドゥア』は『所有者』か?‐『因果的支配』の概念について‐」『アジア・アフリカ地域研究』2: 251-280.
  • 竹田晋也 2003 「熱帯林の撹乱と非木材林産物‐東南アジアのフタバガキ林と樹脂生産‐」池谷和信編『地球環境問題の人類学』 世界思想社、pp.120-140.
  • Ota, T., H. Nguyen, S. Takeda, H.Watanabe 2002 Expansion of farm forestry in Northern Vietnam: a case study from Yen Lap District, Phu Tho Province, Journalof Forest Economics 48(2): 17-24.
  • 田辺明生 2002 「ポストモダンの課題と南アジア」長崎暢子編 〈現代南アジア〉第一巻 『地域研究への招待』、東京大学出版会、pp.277-305.
  • 田辺明生 2002 Moral society, political society and civil society in post-colonial India: A view from Orissan locality 『南アジア研究』14: 40-67.

2) 国際会議等の開催状況

(1) 開催時期・場所: 2003年10月・エチオピア・アジスアベバ大学
  会議の名称: 国際ワークショップ「環境と生業をめぐる地域住民のとりくみ」
  参加人数: 80名(外国人50名、本研究科及びアジスアベバ大学の大学院生を中心とする英語による発表)
  主な招待講演者: Dr. Bekele Getama, Dr. Assefa Tolera, Dr. Ayalew Gebre (いずれもAddis Ababa University)
     
(2) 開催時期・場所: 2003年12月・カメルーン東部州・ヨカドゥマ市
  会議の名称: 現地共同セミナー「熱帯雨林の保護と持続的利用」
  参加人数: 30名(WWF-Cameroon、MINEF=カメルーン森林環境省、GTZ=ドイツ政府援助組織関係者 日本からは4名が参加、2名が発表)
  主な招待講演者: なし
     
(3) 開催時期・場所: 2004年1月・京都大学
  会議の名称: 国際ワークショップ「ラオスにおける森林管理と保全」
  参加人数: 30名(外国人8名)
  主な招待講演者: Dr. Houngphet Chanthavong, Dr. Khamleck Xaydala (いずれもラオス国立大学)
     
(4) 開催時期・場所: 2004年3月・インドネシア・ジャカルタ
  会議の名称: 国際ワークショップ「インドネシア地方社会のミクロロジー」
  参加人数: 90名(外国人80名)
  主な招待講演者: なし
     
(5) 開催時期・場所: 2004年3月・ミャンマー・SEAMEO-CHAT
  会議の名称: 国際ワークショップ「ミャンマーにおける農村社会の変容と在地の農業生態知識」
  参加人数: 50名(外国人25名)
  主な招待講演者: なし

3) 教育活動実績

(1)大学院生の派遣とオンサイト・エデュケーション
  大学院アジア・アフリカ地域研究研究科在籍の予備論文修了者(博士後期課程相当)を、アジア・アフリカ各地に設けられたフィールド・ステーションに派遣し、その周辺における地域研究のフィールドワークを中心としたオンサイト・エデュケーションを実施した。派遣学生は、所定の応募様式(申請書)による研究科内公募にもとづいて審査をおこない、選抜した。支給対象は旅費(滞在費)の一部とし、その額は派遣地域の実情に応じて月額10-20万円の範囲で決定した。これまでの2年間に延べ52人の大学院生をアジア・アフリカ各地のFSに派遣した(詳細については、フィールド・ステーション部門の派遣者リストおよびフィールドワーク報告を参照)。
  なお、オンサイト・エデュケーションのためには教員も延べ27人派遣しているが、科学研究費補助金〈国際学術〉等による渡航時に臨地教育に従事する教員も多く、当プログラムの支援だけがオンサイト・エデュケーションに向けての教員派遣の全容を示しているわけではない。

(2)若手研究者の派遣
  博士号取得者もしくはこれと同等の研究能力を有する若手研究者を学内外からの公募によって採用し、主として海外FSにおける臨地研究および臨地教育の補助に従事させた。旅費のほかに、賃金(月額20万円ほど)を支給。削減された予算の執行において、大学院生派遣をより重視したことから、若手研究者の支援は当初計画より縮小せざるをえなかったが、これまでに3名を採用している。このうち、長期に派遣された若手研究者の活動例については、HP中の大西(ミャンマーFS)生方(ラオスFS)を参照。

(3)若手研究者の採用と国内における研究支援
  博士号取得者を対象に、主として、地域研究関係のデータベースおよびメタ・データベースの作成など、「地域研究統合情報化センター」関係の研究開発に従事する若手研究者を1名採用した。助手相当の給与を支給している。

(4)若手研究者・大学院生を中心とする国際ワークショップ、セミナーの開催
  エチオピアで開催された国際ワークショップの参加者に対し、旅費(滞在費)の一部(10-20万円)を支給。受給対象者は、研究科内公募により、これまでの研究内容、ワークショップにおける発表予定タイトルなどを審査して選別した。

  以上のような、FSおよびそれを支援する「地域研究統合情報化センター」の機能を活用した教育活動により、フィールドワークを中心とする臨地教育の体制が整備されつつある。また、これらの成果として、この2年間に11名(14年度2名、15年度9名)の博士学位取得者(予定)が生まれている。

4) 本プログラムに関連して受けた科学研究費補助金

科学研究費補助金
基盤研究(B)(1)
H15〜18 地域言語としての現代アラビア語の研究‐教育戦略の検討とリソース開発 小杉泰
科学研究費補助金
基盤研究(B)(2)
H15〜18 アフリカ型生業システムの環境保全機能に関する地域研究 重田眞義
科学研究費補助金
基盤研究(A)(1)
H15〜17 東南アジア大陸部・西南中国の宗教と社会変容‐制度・境域・実践 林行夫
科学研究費補助金
基盤研究(B)(2)
H15〜17 東南アジア大陸部の統合型生業・環境データベース構築による生態資源管理の地域間比較 河野泰之
科学研究費補助金
基盤研究(A)(2)
H14〜17 環ヒマラヤ広域圏における社会と生態資源変容の地域間比較研究 山田勇
科学研究費補助金
基盤研究(A)(2)
H14〜16 アジア地域の新興腸管感染症の分子疫学的研究 西渕光昭
科学研究費補助金
基盤研究(A)(1)
H14〜16 島嶼部東南アジアの開発過程と周縁世界:マイノリティ・境域・ジェンダー 加藤剛
科学研究費補助金
基盤研究(B)(2)
H14〜16 参加型開発におけるプロセス・ドキュメンテーションの研究‐スリランカとインドネシアの事例をとおして 足立明
科学研究費補助金
若手研究(B)(2)
H14〜16 ヒンドゥー教における信仰と修行の現代的動態 田辺明生
科学研究費補助金
基盤研究(C)
H13〜14 スリランカにおける小規模金融政策の系譜‐開発援助機関と知識の人類学 足立明
科学研究費補助金
基盤研究(A)(1)
H13〜16 アフリカの半乾燥地域における環境変動と人間活動に関する研究 水野一晴
科学研究費補助金
基盤研究(B)(2)
H13〜15 ミヤンマー北・東部跨境地域における生物資源利用とその変容 竹田晋也
科学研究費補助金
基盤研究(A)(1)
H13〜15 スハルト政権崩壊後のインドネシア地方社会に関する研究 杉島敬志
科学研究費補助金
基盤研究(A)(2)
H12〜15 生活環境としてのアフリカ熱帯雨林に関する人類学的研究 市川光雄
科学研究費補助金
基盤研究(B)(2)
H12〜15 バングラデシュとミャンマーの少数民族における持続的農業と農村開発 安藤和雄
科学研究費補助金
基盤研究(B)(1)
H12〜15 アジアと日・米・欧の経済・文化・政治リンクの総合的研究 阿部茂行
科学研究費補助金
基盤研究(A)(1)
H12〜14 アフリカの農村貧困問題に関する社会経済史的研究 島田周平
科学研究費補助金
基盤研究(C)(2)
H12〜14 非木材林産物生産による熱帯林の持続的利用と多様性保全 竹田晋也
科学研究費補助金
萌芽研究
H12〜14 アラブ・トルコ世界におけるイブン・アラビー学派の系譜 東長靖
科学研究費補助金
特別推進研究(COE)
H10〜14 アジア・アフリカにおける地域編成:原型・変容・転成 白石隆
 IV 総括
 

  本計画では、大学院生の参画にとくに力をいれており、これまでに延べ52人の大学院生および延べ27人の教員を海外のFSに派遣してオンサイト・エデュケーションをおこなったほか、本計画の担い手として学内外から3名の若手研究者を公募等によって採用している。また、国内外で開催されたシンポジウムやワークショップなどに対しても、企画段階から大学院生・若手研究者の積極的参加をもとめて、国際的な場で活躍できる人材の育成に努めている。さらに、これまでの科研費などによる研究の成果の社会に向けての発信として、HPの活用や一般向けのインターネット連続講座などを通じて、研究成果の社会的還元を推進している。科研費プロジェクト成果のより専門的なレベルでの社会的還元として、近刊予定のものとしては、太田至他編『遊動民 アフリカの原野に生きる』(昭和堂、2004・3)や、加藤剛編『変容する東南アジア社会 民族・宗教・文化の動態』(めこん、2004・5)がある。
  以上のように、本計画においては、若手研究者、大学院生を効果的に計画に組み込みつつ、当初の目的を順調に遂行している。また、ボトムアップの予算編成と途中でのチェックによる再配分を通して、常に経費の効果的・効率的な使用に努めている。毎月1回定期的に、主要な事業推進担当者による「執行会議」を開催し、その議事録を関係者に配信するなど、緊密な連絡と調整を図っている。なお、執行会議のダイジェスト版は、「執行会議だより」ないし“What’s New from the Secretariat”としてHPで閲覧可能である。さらに、本計画による活動状況や研究成果などについては、英文・和文からなる詳細な情報をHPに掲載するとともに、月刊のメールマガジンを通してその更新情報を逐次伝えるなど、リアルタイムの情報発信に努めている。

 

 

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