Zambia Field Station
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ンビア南部半乾燥地域におけるソルガム栽培
Sorghum Cultivation in the Semi-Arid Area of Southern Zambia
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
淡路 和江
南部アフリカの各地では、高収量品種のトウモロコシ栽培への転換と集中が進んでいる。これは、都市化の進展に伴う主食の需要の拡大を背景に、政府が農業開発政策のなかでも特にトウモロコシの生産と流通を重視してきたためだと指摘されている。このような流れの中で、もともと栽培面積が小さく、市場価値の低い在来の作物は、年々その栽培面積を減らし、農業政策から置き去りにされる傾向がある。しかしながら、今なおそのような作物を栽培し続け、生活の糧としている地域が存在する。そうした地域では、在来の作物が「土地」と密接に関わり、その「土地」に根ざした農法で栽培されていることが報告されている。本発表では、その在来の作物の一例としてソルガムをとりあげ、ザンビア南部の半乾燥地という環境の中で編み出されてきた農法に注目することで、農業と「土地」との関わりについて論じたい。

ザンビアとジンバブエ国境に位置するグェンベ渓谷は、平均年間降水量が500mm程度ではあるが、年によっては400mmを下回ることも珍しくなく、ザンビアのなかでも雨の少ない地域である。さらに、その降雨パターンは、降雨の集中する雨季の数ヶ月の間を通じて均一であったり、また年によっては偏りがでるなどして不規則である。このためグェンベ渓谷は、たびたび大規模な干ばつの被害を受ける地域として知られている。このように気候が不安定な地域では、国の主要な主食作物であるトウモロコシの栽培が困難となる。グェンベ渓谷の人々は、より耐乾性の高いソルガムを、主食や酒の原料に利用する基幹作物として栽培してきた。しかし、その年の降雨によっては、この収穫すらままならないこともある。

調査村の人々は3種類の畑を持っており、このうちソルガムの栽培をするのは、川から離れ、最も土壌水分に乏しい畑である。ここで主に栽培されるソルガムの品種には、早生の改良品種と、晩生の在来品種がある。人々はこの2品種の栽培特性をいかしながら、一年ごとに収穫する栽培法と、収穫後の刈り株からでたひこばえを越年させる栽培法とを組み合わせて不安定な降雨に対応している。そこで、この畑を含む3つの畑の空間利用を総合的に検討しながら、干ばつが起こりやすい環境に人々がどのような戦略で対処するのかについて分析を試みる。