Zambia Field Station
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土に茎を植える技術 ―ザンビア西部におけるキャッサバ栽培と土地の利用―
The Technique of The Planting Stems on Sand land:
With Special Reference to Cassava Cultivation and Land Use in Western Zambia
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
村尾 るみこ
南部アフリカには、カラハリサンドとよばれる、痩せた砂土の堆積する砂層帯が広がっている。この砂層帯の気候は北の湿潤な地域から南の乾燥した地域まで様ざまであり、地域ごとに固有の植生がみられる。このような環境は概して農業に不向きであることが指摘されており、砂土の農地と、水分、養分ともに豊かな河川沿いなどの農地とを組み合わせている例が多い。しかし、ザンビア西部では、19世紀以降、砂土でのみ農業を営む人口が増加してきた。その理由の一つには、隣国のアンゴラから移住してきた人びと(以下、移住民)が、砂土の堆積するカラハリ・ウッドランドを農地としキャッサバを中心に栽培してきたことが指摘できる。そこで本発表では、砂土に畑を造成する移住民の農法、特に農業技術について、移住に関する歴史的背景を概観しながら明らかにし、彼らの土地の利用法について検討したい。

カラハリ・ウッドランドは、カラハリサンドの砂層帯のほぼ中央に位置する、固有のウッドランドである。このウッドランドでは、落葉性のマメ科ジャケツイバラ亜科の樹木が優占しており、ザンビア西部を縦貫するザンベジ川の氾濫原を取り囲むように広がっている。この氾濫原を中心に強大な王国を築き上げたロジの人びとは、周辺のウッドランドを農地としてほとんど利用してこなかった。一方、移住民はロジからウッドランドのみでの耕作を許されており、そこに造成した畑にキャッサバを植えつけ、主食作物ならびに主要な現金収入源としている。

現在、移住民の村で栽培されているキャッサバの品種は数品種ある。これらは村へ移住にともなって断続的に導入されてきたもので、栽培されている品種の大半を特定の苦味種が占めている。その理由は、この品種が乾燥や病害虫に耐性がある上に、栽培期間が4 年と長く、他の品種に比べて植えつけの手間が省けるためと説明される。人びとはこの苦味種を植えつけた後、まだ生育中の個体から「良質」の茎を切り取り、これを再び植えつける。この「良質」の茎の切り取りによって、生育中の塊根の肥大が阻害される一方で、種茎を多数確保し、周年収穫することも可能となっている。つまり移住民の農業は、人の移動に伴う品種の導入や選択、さらには限られた土地でキャッサバ栽培の継続と収量を確保する独自の技術によって特徴づけられるものであり、これらの特徴と農地の拡大との関係性について、さらに考察したい。