:: 平成16年度 フィールド・ステーション年次報告
エチオピア
  (1)研究活動:
    エチオピア・フィールド・ステーション(EFS)は、首都アジスアベバに拠点をおき、南部諸民族州の南オモ地域にサブ・ステーションを設けて活動をおこなっています。
アジスアベバと南オモ地域のサブ・ステーションのそれぞれのステーションにおいてセミナーをおこないました。アジスアベバにおいては、2004年11月7日に伊藤義将(平成15年度入学)が臨地研究の中間報告をおこない、重田眞義(ASAFAS教員)、西真如(平成15年度第3年次編入学)、山本雄大(平成13年度入学)、佐藤靖明(平成13年度入学)、金子守恵(平成10年度入学)とともに活発な議論をおこないました。南オモ地域のサブ・ステーションにおいては、2004年11月16日にベル・アサンテ(平成14年度入学)が臨地研究の中間報告をおこない、ゲブレ・インティソ博士(EFSのカウンターパート)とマモ・ヘボ博士をまじえて活発な議論をおこないました。
2004年11月10日から27日まで、重田眞義(ASAFAS教員)、ゲブレ・インティソ博士(EFSのカウンターパート)、マモ・ヘボ博士、伊藤義将(平成15年度入学)、ベル・アサンテ(平成14年度入学)、山本雄大(平成13年度入学)、佐藤靖明(平成13年度入学)、金子守恵(平成10年度入学)は、南部エチオピアを中心にスタディツアーをおこないました。スタディツアーでは、南部エチオピアの主食作物であるエンセーテの栽培や加工方法、篭・土器・鉄製品などを製作する在来技術、さらにはコーヒーやチャットなどの換金作物の栽培方法や流通過程についての知見を深め、地域間比較の可能性について検討しました。
 
     
    アジスアベバ大学講義:アジスアベバ大学社会科学部の文化人類学専攻院生を対象に重田眞義(ASAFAS教員)がセミナーをおこなった(2004年11月27日)。 サブステーション:南オモに設置したサブ・ステーションの演習室で現地セミナーをおこなった(2004年11月16日)。フィールドワークの中間報告をおこなっているのは、ベル・アサンテ(ASAFAS院生・平成14年度入学)。  
     
     
   
  (2)共同研究の推進:
    アジスアベバ大学エチオピア研究所前所長バイエ・イマム氏を中心に南オモ地域における言語教育に関する共同研究をすすめました。同氏は2004年7月より3ヵ月間ASAFASの客員教授として来日されました。
科研費「アフリカ型生業システムの環境保全機能に関する地域研究」による共同研究をアジスアベバ大学社会科学部人類学社会学科の教員および大学院生とすすめました。
重田眞義(ASAFAS教員)は、スタディツアー中(2004年11月10日から27日まで)、ズワイ農業大学に在籍中のミティク・ディジさんがエチオピア西南部でおこなった臨地研究の中間報告を聞き、西南部エチオピアにおける在来農業システムの環境保全機能に関して活発な議論をかわしました。
重田眞義(ASAFAS教員)は、2004年11月28日、アジスアベバ大学社会科学部人類学社会学科の大学院生の講義において、科研費「アフリカ型生業システムの環境保全機能に関する地域研究」についての中間報告をおこない、ゲブレ・インティソ博士(EFSのカウンターパート)やアジスアベバ大学大学院生と活発な議論をおこないました。
 
   
  (3)学生の派遣:氏名(入学年度)・渡航期間・利用したFS・調査経費・研究テーマ:
   

川瀬慈(平成13年度入学)・03.9/26-04.8/31・エチオピアFS・当プログラム・「エチオピアの吟遊詩人アズマリとラリベロッチをめぐる音楽人類学的研究」
伊藤義将(平成15年度入学)・04.7-05.4・エチオピアFS・別資金・「エチオピア西部チラ地域における森林資源の利用に関する民族植物学的研究」
西真如(平成15年度編入学)・04.9/3-05.1/31・エチオピアFS・当プログラム・「エチオピアの在来組織活動が 形成する地域社会と公共性」
ベル・アサンテ(平成14年度入学)・04.6/14-04.12/14・エチオピアFS・別資金・「文化的実践としての篭作りの伝統―エチオピア、ハラールの事例から」
山本雄大(平成13年度入学)・04.11/5-05.4/2・エチオピアFS・当プログラム・「嗜好品作物チャットをめぐる人々の営み―エチオピア南部シダマにおける生産・流通・消費―」
佐藤靖明(平成13年度入学)・04.11/5-05.10/30・エチオピアFSおよびケニヤFS・当プログラム・「バナナの民族植物学的研究―ウガンダ中部ブガンダ地域における栽培・利用・分類:エチオピアのエンセーテとの地域間比較の視点から」
金子守恵(平成10年度入学)・04.11/4-04.11/29・エチオピアFS・別資金・「アフリカ型生業システムの環境保全機能に関する地域研究の調査補助」

 
   
  (4)教員の派遣:
   

重田眞義(ASAFAS教員)は、2004年6月13日から17日までの間、イギリスのケント大学において開催された第45回国際民族生物学連合大会にASAFAS大学院生(佐藤靖明)とともに参加し、当プログラムのEFS活動に関連した成果の発表をおこないました(別資金)。
重田眞義(ASAFAS教員)は、2004年11月4日から11月29日までの間、エチオピアにおいて、西真如(平成15年度第3年次編入学)、伊藤義将(平成15年度入学)、ベル・アサンテ(平成14年度入学)、山本雄大(平成13年度入学)、佐藤靖明(平成13年度入学)、金子守恵(平成10年度入学)の臨地教育をおこないました。

 
   
  (5)フィールドステーションの整備:
    EFSでは2003年7月から民間の宿泊施設を借り上げて、教育研究活動の基地としてきました。また、南部諸民族州の南オモ地域メツァ村にサブ・ステーション(南オモサブ・ステーション)を設けて、周辺地域で研究活動をおこなうASAFAS院生の拠点としてきました。いずれにおいても、随時セミナーや共同研究会を開催しました。
EFSではR-BGAN衛星通信システムを活用して、サブ・ステーション、京都、各派遣院生のフィールドとの間で随時電子メールによる連絡をとれる体制を整備、発展させてきました。
アジスアベバFSと南オモ・サブ・ステーションにある調査機器の維持・管理をおこないました。
南オモ・サブ・ステーションにある既設の備品の維持・管理をおこないました。
アジスアベバFSと南オモ・サブ・ステーション不在時の防犯体制の確立をすすめました。
 
   
  (6)関連する教員、大学院生の研究業績:
    編著書
  • Shigeta, Masayoshi & Yntiso D. Gebre (eds), 2005.Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa, African Study Monographs, Supplementary Issue No. 29 (in press).
論文、その他
  • 重田眞義、2004「エチオピア女性のひとり旅:巡礼の非宗教的意義」『旅の文化研究所報告』No.13:1-16.
  • 重田眞義、2004「エチオピア起源の作物“エンセーテ”の多様性を守る人々の営み」『遺伝』58巻5号:80-84.
  • 重田眞義、2004「エチオピア高地の定期市---コーヒーの葉とエンセーテを交換する」梅棹忠夫・山本紀夫(編)『山の現在』岩波書店、pp.197-206.
  • 重田眞義、2004「嗜好品とともにすぎゆくエチオピア高地の一日」高田公理・栗田靖之・CDI(編)『嗜好品の文化人類学』講談社選書メチエ、pp.116-125.
  • 重田眞義、2004「解題:『アフリカ農業の諸問題』」小松和彦・田中雅一・谷泰・原毅彦・渡辺公三(編)『文化人類学文献事典』弘文堂、pp.493.
  • 重田眞義、2004「アフリカの生態・社会・文化を考究するアフリカ研究の拠点」『アフリカ研究』日本アフリカ学会創立40周年記念特別号:24-25.
  • 金子守恵、2004「創り出される土器の形とサイズ」『日本ナイル・エチオピア学会ニュースレター』22-24.
  • Kaneko, Morie, 2005. Learning Process of Pottery Making in Ari people, Southwestern Ethiopia. In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issue, No. 29 (in press).
  • 金子守恵(投稿中)「地縁技術としての土器づくり」『アフリカ研究』.
  • Mamo Hebo, 2005. Land Disputes Settlement in a Plural ‘Institutional’ Setting: A Case of Arsii Oromo of Kokossa District, Southern Ethiopia.In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issue, No. 29 (in press).
  • 西崎伸子、2005「住民主体の資源管理の形成とその持続のための条件を探る―エチオピア、マゴ国立公園の事例から」『環境社会学研究』10号:89-102.
  • Nishizaki, Nobuko, 2004. Resisting Imposed Wildlife Conservation: Arssi Oromo and the Senkelle Swayne’s Hartebeest Sanctuary, Ethiopia. African Study Monographs, Vol. 25(2): 61-77.
  • Nishizaki, Nobuko, 2005.Differing Local Attitudes toward Conservation Policy: A Case Study of Mago National Park, Ethiopia.In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issue, No. 29 (in press).
  • Nishi, Makoto, 2005. Making and Unmaking of the Nation-State and Ethnicity in Modern Ethiopia: A Case Study on the history of Silte people. In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issue, No. 29 (in press).
  • Kawase, Itsushi, 2005. Musical performance and Self-designation of Ethiopia Minstrels: Azmari. In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issues, No. 29 (in press).
  • Kawase, Itsushi, 2005.Enzata. In (Siegbelt Uhlig ed.) Encyclopaedia Aethiopica, volume 2. Institut für Afrikanistik und Äthiopistik, University of Hamburg Press, Hamburg (forthcoming).
  • Kawase, Itsushi, 2005. Lalibälocc. In (Siegbelt Uhlig ed.) Encyclopaedia Aethiopica, volume 3.Institut für Afrikanistik und Äthiopistik, University of Hamburg Press, Hamburg (forthcoming).
  • Belle Asante, 2005. Ge Mot: traditional basketry in the old walled city of Harar, Ethiopia.In (K. Shigeta & Y. D. Gebre, eds.) Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa. African Study Monographs, Supplementary Issue, No. 29 (in press).
  • Belle Asante, 2005.Modern Harar. In (Siegbelt Uhlig ed.) Encyclopaedia Aethiopica, volume 2. Institut für Afrikanistik und Äthiopistik, University of Hamburg Press, Hamburg (forthcoming).
学会などにおける口頭発表
  • Masayoshi Shigeta, 2004. Three Characteristics of African Vegeculture: Comparison of Banana and Ensete. Paper presented at 9th International Congress of Ethnobiology in collaboration with the 45th Annual Meeting of the Society for Economic Botany and the 8th International Congress of Ethnopharmacology, University of Kent, Canterbury, England, June 13-17, 2004.
  • 金子守恵、2005「土器づくりの過程における身体技法:エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人を事例にして」生態人類学会第10回研究大会(於:伊達歴史の杜カルチャーセンター、2005年3月).
  • 西真如、2004「グラゲ道路建設協会:住民組織の活動と公共圏形成」、日本ナイル・エチオピア学会第13回学術大会(於:KKRびわこ、2004年4月).
  • Belle Asante, 2005, “Changes in Basketry Traditions in Harar, Ethiopia”日本アフリカ学会第41回研究大会(於:中部大学、2005年5月).
フォーラム・講演など
  • 重田眞義(コーディネーター)、2004「まなぶ・かかわる・つくりだすーフィールドワークの現場からみえてくる世界」日本ナイル・エチオピア学会第13回学術大会公開シンポジウム、(於:京都大学百周年時計台記念館大ホール、2004年4月17日).
  • 西真如、2004「グラゲ道路建設協会:住民組織の活動と公共空間」エチオピアの教育を語る夕べ(於アジスアベバ、2004年9月).
学位論文
  • 西崎伸子、2005『エチオピアの野生動物保護におけるコミュニティ・コンサベーションの形成』(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士学位論文).
  • Baheta, Daniel, 2005. The Dynamics of Formal Education during Wartime and Its Impact on the Rural People of Eritrea. (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士学位論文).
  • 金子守恵、2005『文脈化される土器づくりの過程―エチオピア西南部オモ系農耕民アリの女性職人による地縁技術の習得・実践・創造』(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士学位論文).
 

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