:: 平成16年度 フィールド・ステーション年次報告
ミャンマー
  (1)研究活動:
    イラワジデルタ、マウービン郡の3ケ村を共同調査地域にし、ヤンゴン大学の地理学科、動物学科、植物学科の大学院生7名(博士課程院生、院生であるが講師などの職にあります)、ヤンゴン大学(上記3学科)と大学歴史研究所、SEAMEO-CHAT(東南アジア教育省組織歴史伝統地域センター)からのカウンターパート(5名)、若手研究員の大西信弘さん(21COE研究員)、東南アジア研究所の安藤和雄(ASAFAS教員)が中心となって参加している共同研究が実施されています。本年度のテーマは、(1)土地改良とそれに伴う飲料水問題、(2)水田漁労/魚類生態、(3)屋敷地林の利用です。また、ラカイン州のベンガル湾沿いに位置するグワ郡の農業や漁業を生業としている2〜3ケ村落でも農業、漁業、地域発展などに関する調査も大西信弘さん、カヌンターパートによって昨年同様共同調査が継続して実施されました。尚ヤンゴン大学博士課程院生を中心にマウービン郡で実施されている共同研究の中間報告を目的としたワークショップの開催が2005年3月14、15日に予定されていましたが、2005年度7月以降に延期されました。  
   
  (2)共同研究の推進:
    若手研究員の大西さんがパイプ役となり、東南アジア研究所との二つの共同研究、京都大学霊長類研究所の一つの共同研究の準備と実施を支援しました。日本の文部科学省留学生への留学生2名の日本での受け入れ先の調整支援を行いました。また、ヤンゴン大学植物学科の博士学位審査の特別委員(愛媛大学 百瀬助教授)の招聘へのための調整と手続きならびに、東京大学人文社会系研究科の桜井教授のゼミが実施しているアジア農村研究会のミャンマーにおけるスタディ・ツアーの準備を支援しました。  
   
  (3)学生の派遣:
    21世紀COEプログラムからフィ−ルドワークへの経済的支援助成を直接受けたミャンマーをフィールドとするASAFAS院生は、本年度はいませんでした。現在フィールド・ステーションが置かれているSEAMEO−CHAT(東南アジア教育省組織歴史伝統地域センター)では、本ステーションを通じて客員研究員となっているASAFAS院生の中西嘉宏さん(平成13年度入学)および総合研究大学院大学(国立民族博物館)の中井純子さんの二人です。本ステーションは、ミャンマーのみならず、インド、バングラデシュ、雲南での農業・農村開発関連のフィールド・ワークも関連事業として位置づけています。本年度はインドにおいて綱島洋之さん(平成14年度入学)、バングラデシュにおいてチャクマ・シシール・ショパンさん(平成14年度入学)、東城文柄さん(平成13年度入学)らASFAS院生3名が21COE派遣院生としてフィールドワークを2〜6ケ月間から実施しています。  
   
  (4)教員の派遣:
    若手研究員の大西さんが、2005年5月〜9月、10月〜3月にかけて派遣され、フィールド・ステーションの運営や共同研究の調整、個人研究のテーマとして、グワ郡での水産資源利用、市場であがってくる魚類資源、漁民の暮らしなどに関する調査を継続しています。安藤は、11月〜12月及び2005年1月と3月にそれぞれ、1〜2週間出張しました。11月から12月にかけては、マウービン郡とタムー郡で調査を行いました。マウービン郡の調査村では、ヤンゴン大学の博士課程大学院生とともに、農業技術と村の歴史に関する聞き取り、郡役所から統計資料の入手を行いまたした。タムー郡では農具の変遷に関する調査を大西さんとともに行いました。2005年1月には、ヤンゴン大学の大学院生、カウンターパートとともにマウービン郡の調査村と、イラワジデルタのマングローブ地帯とその周辺を訪れ、土地利用、乾季稲作の本田準備の耕起作業などの調査を行い、3月に計画されていたワークショップに関して、最終的な調整を行いました。3月は、日本の出発当日にワークショップ延期の報が入りました。ワークショップ開催は延期されましたが、もう一つの目的である他地域の研究者に、ミャンマーとミャンマーFSの活動を知ってもらうための地域間比較研究事業は実施できました。平松幸三さん(ASAFAS教員)、田辺明生さん(京都大学人文研究所)とともに、バガンの仏教遺跡とその周辺の村々、マウービン郡の調査村を訪れ、午前中だけの半日でしたが、ミニ研究会を開催し、大西さん、カウンターパート、ヤンゴン大学大学院生の3名の方に研究発表をしてもらい、地域間比較研究の視点から、平松さん、田辺さんの二人からコメントをいただきました。  
       
    2005年3月 地域間比較調査研究のために、平松さん(ASAFAS教員)、田辺さん(京都大学人文研究所)がイラワデイ・デルタ、マウービン県の共同調査研究村を訪れる。   2005年3月 2005年11月に開催される予定のシンポジュームの一環で実施される予定のスタディ・ツアーの下準備に仏教遺跡群で名高いバガンをおとづれた。遺跡群の中に集落があり、ここでは半乾燥地帯のため、水田はなく、畑作中心の農業が営まれている。  
   
  (5)フィールド・ステーションの整備:
    事務所、通信機器などの整備はすでに完了しているので、2004年度についてはとくべつに整備を行っていません。ただし、研究関連で、ヤンゴン大学大学院生がマウンービン郡で環境汚染の度合いを水質検査により定点観測していることから、試薬類の整備を行いました。  
   
  (3)関連する教員、院生の研究業績:
   
  • Reiji Suzuki, Shinya Takeda, Saw Kelvin Keh (Submitted) 2004 “The impact of forest fire on the long-term sustainability of taungya teak reforestation in Bago Yoma, Myanmar” Tropics Vol.14.No.1:87-102.
  • 鈴木怜治・竹田晋也・神崎護・ソーケルビンケー・フラマウンテイン「タウンヤ式チーク造林は持続的か?‐造林後100年間の植生動態からみたチーク人工林の生態学的問題点‐」第115回日本林学会(東京大学、2004年4月1日‐3日)
  • 綱島洋之 2004 「南インド・コヤ族地域における耕地利用と作付体系の現状」『熱帯農業』第48巻別号1
  • 安達真平 2005「中国雲南省哀牢山地の棚田地域における農業技術と水の利用」『熱帯農業』第49巻別号1
  • 東城文柄 2004「バングラデシュ・モドウプール丘陵における天然林減少とガロの森林利用」『熱帯農業』 第48巻別号2:107-108.
  • 安藤和雄・宇佐見晃一・河合明宣 2004「バングラデシュの農村開発における在地化アプローチの重要性」『熱帯農業』第48巻別号1:95−96.
  • 安藤和雄 2004「農村で農業技術が伝統的に見える意義―ラカイン州の作付体系と農具調査事例からー」『熱帯農業』 第48巻別号2:17-18.
  • 安藤和雄 雲南「紅河県哈尼族の棚田農業―棚田はアジアの原風景―」(第6回 棚田学会発表 13ページ、2004年8月11日)
  • ANDO, Kazuo: ISHIDA, Norio, Water Quality Problems Affecting “Livelihood in Bangladesh and Kazakhstan: A Natural Environment as a Local Area”,Ecological Destruction, Health, and Development ―Advancing Asian Paradigms ( ed. by Furukawa:Nishibuchi:Kono:Kaida), Kyoto Area Studies on Asia Volume 8, Centre for Southeast Asian Studies, Kyoto University, pp.319-333, 2004.
  • Haruo Uchida, Kazuo Ando, Muhammad Salim and S.M. Altaf HossainRural Hydrology: Alternative Approach to Rural Infrastructure Build-Up in Bangladesh Rural Development. JARQ(Japan Agricultural Research Quaterly),JapanInternationalReserchCenter for Agricultural Sciences, Vol.39,No.1,January,2005:5-9.
  • 安藤和雄 2005 「イラワジ・デルタのマウービン郡アランジー村区における土地利用と稲作体系概況調査」熱帯農業49巻別号1:105−106.
  • ANDO Kazuo,MUSHIAKE EtsuoandKOBAYASHI Nobuya Advanced Characteristics in Agroecology of Atsaphone District, Savannakhet Province: Balanced Complex of Crop, Natural Resources and Periodical Market(Paper presented at “Workshop on Local Knowledge and Its Potential Role for Sustainable Agro-Based Development in Laos, 9-10/Feb/2005,Savannakhet, Laos”8ps)
 

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