:: 平成18年度 フィールド・ステーション年次報告
インドネシア(ボゴール)
  (1)フィールド・ステーションの整備:
    今年度、FS運営上昨年度以前との変更は特にありませんでした。MOUを結んでいるCIFOR(国際林業研究センター)は世界の森林に関する資料・情報が収集されているセンターであり、IPBにあるフィールド・ステーションとは近い距離にあるため、このセンターの利用頻度が高まりました。また、植物・動物に関してはボゴールの中心地にLIPIの研究所があり、こことの共同研究も行いました。また、ボゴール・グヌンバツーにある林業省の森林研究所も研究上重要です。小林繁男(ASAFAS教員)と鈴木玲治(ASAFAS教員)はCSEASのジャカルタ事務所にそれぞれ1ヶ月間駐在し、LIPI、CIFOR、IPBと森林研究所との連携を図りました。この21COE終了後にも、IPB、CIFOR、LIPIならびに森林研究所の4機関との連携をはかりながら研究・情報交換の場として、継続的に関係を維持してゆく必要があります。小林繁男はFSの活動の一環として、タイ・バンコクで開催された京大国際シンポジウムでSynthetic approach on the rehabilitation ofdegraded tropical forest (The 8th Kyoto University International Symposiumon towards Harmonious Coexistence within Human and Ecological Community on this Planet)と題して講演を行いました。

 
     
    写真.1 ロング・ブラカ村においてキーインフォーマントと小泉都 写真.2 グヌンハリムン国立公園の調査村にて片岡美和による鳥類の観察  
     
    写真.3 リアウ州テッソニーロ国立公園内で象の訓練を観察中のレトノ 写真.4 アチェにて津波被災地の復興状況を観察するシャフィナ  
     
    写真.5 中部ジャワで最大の植林されたチークと鈴木玲治  
   
  (2)研究活動と共同研究の推進:
    2006年度の院生・研修生の派遣・出張は7名です。

Retno Kusmaningtyas(平成14年度入学)は“Co-management of natural resources in Sumatra, Indonesia.”という研究課題で、2006年10月から12月の1.5ヶ月間、Teso Nilo, Riau Province, Sumatra, Indonesia に入り、定住村(ルブッククバンブンガ村:521戸、アイールヒタム村:286戸)で継続研究を行いました。また、伐採会社、オイルプランテーション会社、パルプ・チップ生産会社と地域住民との関係を国立公園管理を通して検討しました。

小泉都(平成13年度入学)は「ボルネオの狩猟採集民族プナンの民族植物学」に関して、2007年1月から2月にかけて、CIFORに研究ベースおいて、インドネシア、東カリマンタン、マリナウ、ロング・プジュンガン、ロング・ブラカ村において、プナン・ブナルイの植物に関する民俗知識の収集と証拠標本の採集を行い、CIFORでは博士論文の執筆も行っています。

片岡美和(平成15年度入学)は「鳥類と住民の生業との相互関係:インドネシア,西ジャワの山間地農村における研究」に関して、インドネシア、ジャワ島、西ジャワ州グヌン・ハリムン−サラック国立公園周辺地域の生業活動の調査を3農村で行い、住民の土地利用をもとに農村環境を水田、混栽樹林地、草地・低木林地、畑地、茶農園、森林の6つの環境要素に区分し、そこでの継続調査を行いました。

鈴木遥(平成17年度入学)は「インドネシア・東カリマンタン州における建築材としてのUlin (Eusideroxylon zwageri)の利用の特徴」という課題で2006年5月から12月まで東カリマンタンのサマリンダ・スブル・ボンタン・サンクランに滞在・調査を行いました。その結果、家屋の基礎材と構造材には必ずウリンが用いられ、またさまざま部分にも利用されていることを明らかにしました。

シャフィナ(平成18年度研究生)は「The progress of rehabilitation and reconstruction of tsunami destroyed areas in Manggroe Ache Darussalam Province, Indonesia」という課題でアチェ州に2006年5月から8月までと2007年1月に滞在し、津波破壊後の集落の復興と住民の生活回復の実態を調査しました。

小林繁男・川江心一(平成18年度入学)・岩田剛(平成18年度入学)は環境省プロジェクト「東南アジア低湿地における温暖化抑制のための土地資源管理オプション」に関して、2006年9月にインドネシア、スマトラ島リアウ州ザムルッドで、天然泥炭湿地林を調査しました。ここではShorea, Sizygium, Calaphylum等が優占していました。小林繁男は続いて、ボゴールで北海道大学・LIPI共催のInternational Symposium on Nature and Land Management of Tropical Peat Land in South East Asiaに出席し、「Ecological functions of peat swamp forest and land resource management for global-warming prevention in Southeast Asian wetlands」と題して基調講演を行いました。鈴木玲治は2006年6月に中部ジャワのチーク植林で概査を行いました。古川久雄(京大名誉教授)は環境省プロジェクト「東南アジア低湿地における温暖化抑制のための土地資源管理オプション」で、インドネシア、スマトラ島ジャンビ州に入り、硫酸酸性化した荒廃水田の再生を図り、鉄分の肥料が米生産量に強く効果があることを明らかにしました。
 
   
  (3)教員、院生の研究業績:
   
  • Tetsuya Shimamura, Kimiyasu Momose. Shigeo Kobayashi. 2006. A comparison of sites suitable for the seedling establishment of two co-occuring species, Swintonia glauca and Stemonurus scorpioides, in a tropical peat swamp forest. Ecological Research, 21: 759-767.
  • Retno Kusumaningtyas, Shigeo Kobayashi, Shinya Takeda. 2006. Mixed species gardens of Java and the transmigration areas in Sumatra, Indonesia: a comparison. Journal of Tropical Agriculture, 44: 15-22.
  • Kobayashi, Shigeo. 2006. Synthetic approach on the rehabilitation of degraded tropical forest. The 8th Kyoto University International Symposiumon towards Harmonious Coexistence within Human and Ecological Community on this Planet. Bangkok, Thailand. pp.31-36.
 
   

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