:: 平成18年度 フィールド・ステーション年次報告
ミャンマー
  (1)フィールド・ステーションの契約終了:
    今年度、上半期をもってFSの賃貸契約を終了しました。
2005年来、ミャンマーの政治状況ならびに、教育大臣の教育機関への抑圧は強まる一方であります。今年度は、赤十字も撤退を表明しているほか、国費で日本に留学しているミャンマーの教育省管轄の機関に所属する大学院生たちは、一時帰国すら許されません。また、国内でも、ヤンゴン大学の教官が、学生指導のために他の大学に出張に出るための許可を得るのも困難な状況にあります。
 
   
  (2)学生の状況:
    今年度、ASAFAS院生の中西嘉宏(平成13年度入学)が、博士号を取得見込みです。共同研究プロジェクトのジュニアカウンターパートの中から、Cho Cho Twinさん(地理学科)、Thida Myintさん(植物学科)がヤンゴン大学で博士を取得しました。Cho Cho Twinさんの学位審査に、安藤和雄(CSEAS教員)が外部審査員として学位論文の審査に当たりました。ジュニアカウンターパートのNaw Si Blutさん (SEAMEO-CHAT: 東南アジア教育省機関、ヤンゴン)は、昨年度より東京外国語大学に短期留学のため、来日していたが、9月に帰国しました。留学中は、日本の占領下の歴史についての研究を進めていました。この他に、Yin Yin Winさん(動物学)、Thein Soeさん(動物学)、Pyone Ayeさん(動物学)、Khine Myint Choさん(地理学)が博士論文を準備中です。
 
   
  (3)共同研究プログラムの進捗状況:
    21COEで進めてきた、イラワジデルタの農村研究については、下記にあるように、総括のワークショップを開催し、原著論文の出版準備中です。
2000年度の科研「バングラデシュとミャンマーの少数民族における持続的農業と農村開発(1999-2003)」(代表者:安藤和雄)、「ミヤンマー北・東部跨境地域における生物資源利用とその変容(2001-2004)」(代表者:竹田晋也)、「ミャンマー少数民族地域における生態資源利用と世帯戦略(2003-2006)」(代表者:速水洋子)以来、共同研究を組織してきました。現在の政治的状況の中、多少の困難がともないますが、今回の21COEプログラムで拡大してきた共同研究チームを発展的に継続させていくため、科研「「ヤンゴン-ハノイ」トランセクトにおける生態環境の履歴(2005-2009)」(代表者:平松幸三)、科研「ブラマプトラ川流域地域における農業生態系と開発ー持続的発展の可能性ー(2005-2009)」(代表者:安藤和雄)、科研「環ヒマラヤ地域と日本における農具収集と住民参加型資料館ネットワーク形成(2006-2008)」(代表者:安藤和雄)などのプログラムの下、竹田晋也(ASAFAS教員)、鈴木玲治(ASAFAS教員)、速水洋子(CSEAS教員)、安藤和雄(CSEAS教員)、大西信弘(京都学園大学)らで、SEAMEO-CHAT、ヤンゴン大学、イエジン大学などとの共同研究を継続しています。
 
   
  (4)教員の派遣:
    ヤンゴンFSでは、Review Meeting on Study on Rural Life and Local Knowledge in Maubin Township, Ayewadye Delta. として、2006. 08. 24-25に、SEAMEO-CHAT共同研究プロジェクトの総括のワークショップを開催した。現在、発表者の論文を編集して出版を準備中です。

Program of Revies Meeting on Study on Rural Life and Local Knowledge in Maubin Township, Ayeyarwaddy Delta.
  • Session I: History and social Economy
    • 1.An Integral Approach to the Local History of Study Area
      Myint Thein (UHRC)
    • 2.Impact of Infrastructure and Communication Development on Social Life of People in Ma-u-bin Township
      Win Myat Aung (SEAMEO-CHAT)
    • 3.Recent Changes in Socio-Economic Situation of Farmaer’s Life in Ma-u-bin Township
      Aye Mon Kyi (UHRC)
    • 4.Socio-Economic Structure of Kyonsoke and Alangyi Village Tracts
      Khine Myint Cho (Dept. of Geography, Univ. of Yangon)
  • Session II: Agricultural and Environmental Studies
    • 5. Environmental Images of Rural People: The Case of Kyonsoke and Alangyi Villages
      Saw Pyone Naing (Dept. of Geography, Univ. of Yangon)
    • 6.Agro-based Socio-Economic Conditions of Kazan, Kundaingkalay and Moemakha Villages
      Cho Cho Twin (Dept. of Geography, Univ. of Yangon)
    • 7.Comparative Assessments of Different Water Resources in Ma-u-bin
      Pyone Aye (Dept. of Zoology, Dawai Univ.)
    • 8.Lnad Use and Rice Cropping systems in Alangyi Village, Ma-u-bin Township, Ayeyarwaddy Delta
      Ando Kazuo (CSEAS, Kyoto Univ.)
    • 9.A Traditional Farmers’ Technology in Blackgram in Ma-u-bin Village
      Khin Lay Swe (Dept. of Agriculture, Yezin Univ.)
  • Session III: Ecological Resource
    • 10.Socio-economic Study of Fishery of Two Villages in Ma-u-bin
      Yin Yin Win (Dept. of Zoology, Mandalay Univ.)
    • 11.Ecology of Some Freshwater Species and Seasonal Reproduction of Anabas testudineus in Ma-u-bin Township
      Thein Soe (Dept. of Zoology, Dawei Univ.)
    • 12.Perspective of the Integrated Area Studies to Understand People’s Livelihood
      Ohnishi Nobuhiro (Dept. of Bio-env. Sci., Kyoto Gakuen Univ.)
    • 13.Study on Useful Plants of Homestead in Kyonsoke and Alangyi Villages, Ma-u-bin T/S in Ayeyarwaddy Division
      Thida Myint (Dept. of Botany, Taungoo Univ.)
    • 14. Social Life of Women in Rural Myanmar: A Case Study on Ma-u-bin Township
      Naw Si Blut (SEAMEO-CHAT)

以下の写真は、21COEプログラムで調査したマウービン地域の村落風景。ごく狭い範囲に、このような多様な状況が生じています。

 
       
    写真1.最近道路が整備された地区。それに伴い、新築の家が建ち並ぶ。  

写真2.地区によっては、このように、水路脇や水路の上に家を建てて暮らしているところもある。

 
     
    写真3.土地改良によって、干拓事業が行われている地区。  
  従来、水資源をクリークの水に頼っていたが、干拓事業による水量減少に伴う水質悪化が懸念される。問題なのは、代替の水資源に乏しいこと。
   

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