Zambia Field Station
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セッション2
エンカウンターの場としての水辺 →セッション概要
コメンテーター(舩田)
セッション全体へのコメント
 本セッションは発表者3人とも多彩な内容であったが、水辺が出会いの場である点に注目したことでまとめている。出会いの内容は岡本は「多民族」、吉田は「ゾウと人」、中山は「先住者と移住者」であった。三人ともに希薄だったのが、今なぜその研究をやるのかという問題意識の提示である。
 共通の隠れたテーマとしては、資源管理の問題があったといえる。出会いは資源利用をめぐって生起しているのであり、その資源が一体誰のものであり、どう管理されるべきかという課題が共有されているように思われる。そこにたとえば援助側が何をすべきかというような提言が可能かと思われる。
質問1
 岡本へ:エスニシティを論ずるうえでは、国家の視点も必要ではないか。ロジとウィコ系とを区別する根拠が不明瞭であるが、ロジとウィコ系との関係はどうなっているか。こうした研究をとおして何を言いたいのか。
岡本回答
 牛を預けたロジと、牛を預かったウィコ系の人々の関係は対等であるとはみえない。ウィコとは、ロジ語で「西から来た人々」という意味。ロジでは、西は不吉な方角と考えられており、ウィコには侮蔑的なニアンスを含んでいる。しかし、彼らは歴史的にも、ロジにはない新たな技術をもたらしてきた面もある。こうした研究をとおして、人と人がいかにつきあうのか、あるいは人と自然の関係について考えたいと思っている。
質問2
 吉田へ:環境変化とは、植生や気候などの自然環境による影響だけでなく、国家政策やNGOなど人為的な影響が大きいのではないか。環境変化に対応するミクロの変化をどう受け止めるのか。資源管理といったときに、資源とは誰のものか。
吉田回答
 この調査地では、ヒンバの人類学的調査をしていた研究者とNGOの強い働きかけによって、観光業を中心とした住民参加型の自然資源管理が1980年代から行われてきた。それと同時に、牧畜に依存してきた住民の生活は、観光業による現金に依存する生活へと大きく変化してきた。よって、人為的な影響による環境変化が強く働いたといえる。現在、この調査地へ移住してきた人々は、この変化に対して敏感に反応し、適応してきた人たちだといえると思う。
 しかし、「住民参加型」といわれる自然資源管理ですが、NGOと政府によって徹底的に環境教育をされ、住民はいわれるままに従っているようにみえることがある。今後は、個々の住民の「自然資源」に対する考えにも注目し、資源とは誰のものかという問いを考えていきたい。
質問3
 中山へ:交渉のイニシアティヴが先住者側にあるという話であるが、それは当たり前のことのようにも思える。この現象は、調査地に特有のものなのか、それともマラウイ湖、あるいは南部アフリカ全体にいえるのか、位置づけをしてほしい。政策的介入の話がちらっと出てきて消えたが、これはマラウイの政策への抵抗の物語なのか。
中山回答
 交渉のイニシアティヴのありかについての分析は実際には難しく、定型化された語りに依存する部分が大きい。調査地では先住者がイニシアティヴをもっていたように語られるが、マラウイ湖の南端ではその逆であり、狭い地域に限定しても対照的であることが興味深い。研究の方向性としてはどちらかを当たり前として論じるのではなく、イニシアティヴの保持を可能にする積極的な営為や、現在そのように語ることによって達成されるものに注目していきたい。
 このような歴史表象の問題は資源管理の文脈では、資源の所有意識や資源利用をめぐる共同性の所在と関連付けて論じられることが多い。マラウイでは、マラウイ湖南端に関する限られた議論が湖の資源管理政策に直接に影響を及ぼしており、ほとんど機能しないまま湖全体へ拡大施行されてきた。政策的介入の失敗が要旨にも記した共同性喪失の語りを生産するという再帰的関係が想定できる。この悪循環を指摘することにこの研究の現代的意義がある。
 調査地の事例を政策的介入への抵抗として捉えることは不可能ではないだろう。儀礼を介した資源保有の重層化・秘密化などは、土地保有における抵抗の議論にも登場する。しかし発表者はこれらを抵抗の事例へと還元してしまうことにはためらいを感じる。抵抗として論ずる前に、ある場所における漁撈技術の一環として、漁撈をめぐる一枚岩でない社会に錯綜する権力関係の諸相として分析したほうが適切であると思われる。

質問者 1
質問1
 岡本へ:ロジの社会を考えるうえで、王国のインパクトは重要。またかつての奴隷制度も水路建設などで大きな意味をもった。
岡本回答
 貢納の制度はもう廃れたが、クタと呼ばれる裁判制度は現在でも機能している。私が訪ねた範囲でも、奴隷制度の話しはよく聞かれる。とくに村ごとに配置された家内奴隷は現在では解放され、村の一住民となっている。
質問2
 吉田へ:個体数、群れにオスはいるか、周期的な移動と植生回復の関係、「砂漠ゾウ」という名称はおかしいという指摘。
吉田回答
 プロス付近では54頭のゾウが観察されている。ここでは大きな群れは作らず、大人オスはたいてい1頭で行動している。数十年単位の長期的移動についての先行研究はありませんが、乾季・雨季での季節的な移動があることが知られている。「砂漠ゾウ」は亜種ではなく、一般的なアフリカゾウ(サバンナゾウ)である。
プログラム  セッション2  WSトップ
日時:2006年2月18日 10:30 - 
場所:東京外国語大学本郷サテライト
共催:南部アフリカ研究会
共催:日本アフリカ学会関東支部

発表者感想
プログラム
総合討論

開催に際して

趣旨説明

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