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セッション3
社会変動のなかの「土地」 →セッション概要
コメンテーター(児玉谷)
セッション全体へのコメント
 本セッションの発表者は、構造調整、開発政策、アパルトヘイトといった避けがたい大きな大きな社会変動の影響を、あえてミクロな住民の視点から提示した。昨今のグローバル化時代において、国家さえも自由に政策を採用できない状況に置かれているのに対し、ミクロ・レベルでは、したたかに社会関係を再編しながら土地利用を調整する人々の姿があるという点が興味深かった。グローバル化というのは一様に進むことだけれども、ミクロにおいてそれがどのように展開していくのかというのは、これらの発表のような個別具体的なところをみておかないとならないのである。
 また、中山さんの「むらの中の『まち』」という表現のように、南部アフリカの農村社会が、出稼ぎ労働者の帰還や、学校・病院等の公共サービス空間の創出を通じ、都市的な概念や意識を採り込んで再編されていくのか、そこに彼らの柔軟性がどのように見られ、どのように調和をはかっているのか?そうした過程についてのさらなる研究を期待したい。若い時は都市で生活し、年をとると、リタイアして農村に戻ってくるパターン。その辺りはどうなっているのか?現在のように若者が都市で生活しにくい状況では農村ではどのような変化がみられるのか?
 マクロな影響というものは、各フィールドで多様性をみせる。今回の発表ではその多様性を見ることができた。しかし、多様性がでるのは当然のことであり、その先何を発言していくのかがものたりなかった。
質問1
 吉川へ:土地利用と関連したジェンダー社会関係(居住形態や相続など)が変化してきていることは非常に興味深い。土地利用とジェンダー社会関係との関連性について補足説明していただきたい。
吉川回答
 まず、農業流通の自由化により換金作物が変化したことで、農業における男性の労働力の必要性が大きくなった。また、ダンボ畑や村内畑は、以前は共有地として利用されてきた場所に開かれる。さらに、この2種類の畑は男性の出身村に開かれることがほとんどある。このように、男女の分業形態が変化したこと、また土地に対する価値観・所有概念が変化していることがジェンダー社会関係にも何らかの影響を及ぼしていると考えられる。
質問2
 丸山へ:政府が提供した社会サービスを利用しながら、その一方で、定住地の周辺でサン独自の「美しい住みかた」を再編しているというのは、興味深い。人々の対応は当初想定されていたものとは違った展開を見せるが、それは「抵抗」とも言いがたいようなものである。それらが積み重なって新たな社会変動を生み出すという視点も重要であろう。
丸山回答
 社会変動ということについて、ボツワナの場合、国家が枠をかけていくという側面が強い。しかし、同時にグローバルな流れの中でNGOを中心とした先住民運動が活発化しており、サンの人々の生活はその両方から強いインパクトをうけている。先住民運動は国家を超える形で展開されているし、場合によっては南部アフリカという地域も超えて、カナダやオーストラリアの先住民と連帯が生まれている。今回の発表では国家政策に注目したけれど、セトルメント・スキームをひとつとっても、NGOとのあいだの対立関係、または共同作業、あるいは期せずした共犯関係などを生み出しており、社会変動のほうも複雑に絡み合っている。こうしたところももっと注目していきたい。
質問3
 飯山へ:南部アフリカでは、長らく、若い男子が出稼ぎに出て行き、引退して農村に戻る、という世代間・ジェンダー関係があった。しかし、若者が都市で雇用を得られない今日、男性は農村でどういうイニシアチブをとるのか。世代間・男女間関係にも何らかの影響を与えるのか。
飯山回答
 吉川さんのザンビア農村とは対象的に、南ア農村の男性は、農業に従事しない。昔から南ア・バンツー系農牧民については、女性は農業をするが、男性は家畜飼育や出稼ぎ労働を好むと言われてきた。現在、失業で農村に多くの若い男性が滞留しているが、土地利用に従事することはなく、若い男性による自発的な農村開発イニシアチブは今のところ見られない。アルコール中毒や家族の崩壊、女性への暴力など、世代間・男女間問題にかかわる社会問題は本当に深刻である。

質問者 1
 飯山へ:屋敷畑だけでやっているのか。土壌劣化による生産性低下の問題はないのか。
飯山回答
 屋敷畑の敷地内には家畜囲いがあり、自然と敷地内の土壌は肥沃度を保たれているようだ。村人も、乾燥させた堆肥を木の灰と混ぜる方法を知っており、屋敷畑内なら施肥作業も容易である。他方、畑については土壌の肥沃度維持に充分な堆肥を得ることのできない世帯もあり、また施肥作業も困難である。同じメイズ連作後でも、屋敷畑に比べ畑の生産性は遥かに低い。今日は、畑の遊休の理由として、耕作委託費用という経済的要因を強調したが、実は畑の生産性の低さも大きな原因である。

質問者 2
 飯山へ:畑が使用されていないなら、遊休されている畑のレンタル契約などはないのか。
飯山回答
 土地の流動化という現象は、今のところ起こっていない。耕作委託費用を負担できないため、借り手もおらず、結局、誰も使っていないという現状である。

質問者 3
 吉川へ:村中畑というのは屋敷畑のことではないか。村中畑はもともとは一般畑であり、それが村の中にできているということではないか。
吉川回答
 村内畑は屋敷のそばに必ずしも開かれているわけではない。移動の歴史と関連して、同じ村の中でも屋敷の遠くに開かれていることもある。また、多年生の植物も多くは栽培されていない。そうした点で屋敷畑とは異なると考える。

質問者 4
 南アフリカのトウモロコシ生産量はものすごい。これは南部アフリカ地域が干ばつに陥った時のことも考えているのではないか。ザンビアの農村住民の立場でザンビアがトウモロコシを輸出しなくてはならない現状と南アフリカのトウモロコシの生産能力、それらを取り囲む国際情勢をどのように考えるのか。

質問者 5
 吉川へ:ダンボ、ダンボ畑をめぐってコンフリクトはあるのか?ダンボ畑と村内畑はどのように利用を開始されるのか?村長はどのように関与するのか?分配のあり方は?
吉川回答
 コンフリクトはある。自分の先祖が相続した土地であることが後になって判明した例、親族内で用益権が誰にあるのかを争う例が観察された。
 基本的には村長によって分配されるが、ダンボ資源を少数しか利用していなかった70年代から80年代にかけては、発見した者が村長に利用を開始する旨を伝え、畑を開いていたようだ。この頃は村長の権限はダンボに関しては大きくなかった。しかし、現在では村長の許可が必ず必要である。

質問者 6
 丸山へ:全体の1/4の住民がマイパー(政府が指定した再定住地の周辺に住民が自発的につくった居住地)に住んでいると言っていたが、それはつまり3/4が再定住地に住んでいるということだ。この人々は単に政府のやり方を受容した受身的な人々だといえるのか、あるいはこうした人々もなにか自分たちで変容されていく試みをしているのか。
丸山回答
 まず1/4というのはある時点でマイパーに居住していた人々の割合で、長期的にみると、人々はマイパーと再定住地のあいだを頻繁に移り住んでいる。したがってどちらに住むというのは固定的なものではないし、人々も「自分はどちらでも生活できるけど、たまたま今こちら側にいる」といったようなことを口にする。しかし、再定住からもう10年弱がたち、これまでマイパーにしか、あるいは再定住地にしか住んでこなかった人々もでてきた。その結果として、両者のあいだにはいろいろな違いが生まれていて、それがこの社会を分化させていく可能性はある。
 また私は政府の提供する「新しいもの」をサンが容易に受容するということをそれほどネガティブにはとらえていない。重要なのは、そのことがそれまでのものを捨てるという方向にはいかず、オプションが増えていくというような感じですすむことだとおもう。そしてそれこそが、様々な社会との接触の中でも、彼らが「狩猟採集」という生業形態を喪失させることなく現在まで続けてきた背景の一つだと考えている。
プログラム  セッション1  WSトップ
日時:2006年2月18日 10:30 - 
場所:東京外国語大学本郷サテライト
共催:南部アフリカ研究会
共催:日本アフリカ学会関東支部

発表者感想
プログラム
総合討論

開催に際して

趣旨説明

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