:: 平成15年度 フィールド・ステーション年次報告
ケニア
  (1)研究活動および学生のフィールドワークの支援:
    ナイロビ・フィールド・ステーション(ナイロビFS)は、ナイロビで借用したフラットにオフィスをかまえて調査研究の拠点としており、地域的にはケニアとウガンダの両国をカバーしています。
2003年度には2人の教員と3人の大学院生が当プログラムの資金によって海外に派遣され、FSを活用しながら教育研究に従事しました。これ以外にも、別資金によって渡航した1名の教員と2名のASAFAS大学院生がナイロビFSを利用しています。
□教員の派遣と海外調査
  • 太田至(ASAFAS教員)は7/26-9/15の期間、トヨタ財団の委任経理金によってケニアとタンザニアに出張し、フィールド・ステーションの整備や大学院生(中村香子、孫暁剛)の臨地教育、ナイロビ大学との共同研究にたずさわると同時に、「東アフリカ牧畜社会の社会変容に関する研究」のためのフィールドワークを実施しました。タンザニアでは、川西陽一(ASAFAS大学院生:平成14年度入学)の臨地教育にたずさわりました。
  • 田中二郎(ASAFAS教員)は、10/18-11/18の期間、海外出張しました。まず、エチオピアのアジスアベバ大学で開かれた「フィールド・ステーション連携ワークショップ」に参加したあと、ケニアでは、内藤直樹(ASAFAS大学院生:平成10年度入学)の臨地教育を実施しました。
  • 太田至は、10/18-11/6の期間、エチオピアとケニアに出張し、アジスアベバ大学で開催された「フィールド・ステーション連携ワークショップ」に参加したあと、ケニアでは、内藤直樹(ASAFAS大学院生:平成10年度入学)の臨地教育を実施しました。
□ナイロビFSを利用した大学院生:氏名(入学年度)・渡航期間・調査経費・派遣国・研究テーマ
  • 中村香子(平成10年度入学)・8/3-10/22・当プログラム・ケニア・「東アフリカの牧畜民サンブルの身体装飾と年齢体系の変容に関する人類学的研究」
  • 孫暁剛(平成13年度3年次編入学)・8/20-10/3・科研費・ケニア・「東アフリカの牧畜社会における持続可能な牧畜モデルの構築に関する社会生態学的研究」
  • 内藤直樹(平成10年度入学)・10/18-11/16・科研費・ケニア・「アフリカ牧畜民社会における生業変容と民族間関係の動態に関する人類学的研究」
  • 坂井紀公子(平成10年度入学)・12/1-2/29・当プログラム・ケニア・「ケニアにおける国家とマーケット商人の関係に関する研究:マチャコス市の事例より」
  • 白石壮一郎(平成10年度入学)・12/7-3/15・当プログラム・ウガンダ・「東アフリカ小農社会における農業の商業化にともなう生業構造と社会関係の再編に関する研究」
 
     
    ナイロビFSで討論をおこなう中村香子・孫暁剛
(ともにASAFAS大学院生)とケニア人の研究協力者たち
ナイロビFSの入り口にて。中村香子とサンブル人の研究協力者  
   
  (2)フィールド・ステーションの整備:
    ナイロビFSでは、2003年6月からナイロビでフラットを借用して、教育研究活動の基地として利用しています。今年度には、のべ3人の教員と5人の大学院生が利用しました。
FSでは、ASAFASの大学院生と教員およびナイロビ大学の研究者が随時、共同セミナーを実施しました。
太田至は、7/26-9/15、10/18-11/6の出張期間を利用して、このフラットの整備をしました。具体的には、コンピュータや電話機、ターミナルアダプタの設置、電話番号の取得とプロバイダへの加入、ISDNによるインターネットへの接続をおこない、インターネット環境を整備しました。また、机・椅子・本棚・ホワイト・ボードの設置、停電時の電源確保、不在時の管理体制の確立、床のワックスがけなどの居住環境の整備等々もおこないました。
このステーションは、フィールドワークに必要な機材・物資を保管するためにも使います。
現在、ナイロビFSのホームページを作成中で、近日中には公開する予定です。
 
   
  (3)共同研究:
    太田至は、ナイロビ大学アフリカ研究所の所長と、今後の共同研究の可能性、具体的には共同のプロジェクトの実施について話しあい、また、2004年度に日本アフリカ学会学術大会がひらかれる期間(5/29-30)にあわせて、5/25-6/7の期間に訪日していただくことにしました。この機会に、日本のアフリカ研究者との交流を深めてもらうと同時に、ナイロビ大学アフリカ研究所と京都大学アフリカ地域研究資料センターのあいだで締結しているMOUを再検討する予定です。
トヨタ財団による助成金によって「難民と地域住民の共存をめざして-ケニア共和国からの提言-」(2001年11月-2003年10月)という研究プロジェクトを、ナイロビ大学アフリカ研究所と共同ですすめてきました。
上記のプロジェクトにはナイロビ大学修士課程の学生も参加しましたが、太田至はこの学生が提出した修士論文を読み、フィールド・ステーションで討論をおこなうなど、実質的な指導もしてきました。この学生は2004年3月15日に、修士論文をめぐる口頭諮問とディフェンスを無事に終えました。
 
   
  (4)教員と大学院生の研究業績:
    編著書
  • 田中二郎・佐藤俊・菅原和孝・太田至(共編著)、2004『遊動民-アフリカに生きる』昭和堂、736pp.
論文など
  • 田中二郎、2004「序」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.i-iv.
  • 田中二郎、2004「原野の知恵を求めて-ブッシュマンとの37年」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.28-47.
  • 太田至、2004「牧畜社会研究のおもしろさ」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカに生きる』昭和堂、pp.271-288.
  • 太田至、2004「トゥルカナ社会における婚資の交渉」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカに生きる』昭和堂、pp.363-392.
  • 水野一晴、2003「ケニア山における氷河の後退と植生の遷移-とくに1997年から2002年において-」『地学雑誌』112:608-619.
  • 水野一晴、2003「キリマンジャロの氷河の縮小」『地学雑誌』112:620-622.
  • 水野一晴、2003「アフリカの環境変動とそこに生きる植物や人々のくらしについて-ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠を例に-」『人文地理』55:597-598.
  • 水野一晴、2003「アフリカの環境変動とそこに生きる植物や人々のくらしについて -ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠を例に-」『地理学ウィーク 2003・資料集』23-29.
  • 水野一晴、2004「地球温暖化とアフリカ」『学士会会報』844:23-29.
  • 中村香子、2004「『産まない性』-サンブルの未婚の青年層によるビーズの授受を介した恋人関係」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.412-438.
  • 中村香子、2003「牧畜民サンブルの『戦士』の旅-観光地への出稼ぎと装身具をめぐる新しい経験-」『旅の文化研究所研究報告』12: 109-131
  • 白石壮一郎、2004「パートタイムの牧夫たち-山地農耕民サビニの放牧キャンプから」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.687-709.
  • 内藤直樹、2003「『境界』の旅人たち-牧畜民アリアールの日常的実践」『エコソフィア』11:54-55.
  • 内藤直樹、2003「個人のこころみがささえる生業変容-沖縄県久高島における生業活動の変遷の過程から」篠原徹(編)『現代民俗誌の地平1・越境』朝倉書店、pp.191-220.
  • 内藤直樹、2004「牧畜民アリアールの複合的なアイデンティティ形成-『同一経験の共有』に基づく帰属意識形成の事例から」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.567-592.
  • 孫暁剛、2004「『搾乳される』ラクダと『食べられる』ウシ-遊牧民レンディーレの生業多角化への試み」田中二郎他(共編)『遊動民-アフリカの原野に生きる』昭和堂、pp.630-649.
  • 佐藤靖明、2004『バナナの民族植物学的研究-ウガンダ中部ブガンダ地域における栽培・利用・分類』(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文)
学会などでの口頭発表
  • 水野一晴「アフリカにおける環境変動と植生の遷移-ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠を例に」日本地理学会2003年春季学術大会(於東京、2003年3月)
  • 水野一晴「アフリカにおける近年の環境変動と植生遷移-ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠を例に」第50回日本生態学会(於つくば、2003年3月)
  • 水野一晴「アフリカにおける環境変動と植生の遷移-ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠を例に」日本アフリカ学会第40回学術大会(於島根、2003年5月)
  • 中村香子「牧畜民サンブルの『戦士』の旅-観光地への出稼ぎと社会変容に関する人類学的研究-」第9回旅の文化研究フォーラム(於東京、2003年4月)
  • 白石壮一郎「ウガンダ東部、山地農耕民サビニにおける共同労働の形態とその変遷」生態人類学会第8回学術大会(於静岡、2003年3月) 
  • 内藤直樹「沖縄県久高島におけるサンゴ礁海域の利用と認識の戦後史-個人の『小規模なこころみ』がささえる絶え間ない生業変容」民族自然誌研究会第31回定例会『渚の生業、渚の遊び』(於京都、2003年4月)
  • Naito Naoki, "Sharing Categories and Experiences: The Construction of Social Bonds through Practice on the Border between Cushitic and Nilotic Speaking Pastoralists in Northern Kenya." International Workshop of 21st Century COE Program on “Environment, Livelihood and Local Praxis in Asia and Africa.” At Addis Ababa University, Ethiopia, October 20-23, 2003
  • 内藤直樹、「『ともにあること』と『同じであること』:北ケニアの牧畜民アリアールにおける複合的な民族アイデンティティ形成の事例から」生態人類学会第9回研究大会(於滋賀、2004年3月)
  • 孫暁剛「『ラクダ遊牧民』レンディーレ社会におけるウシ飼養の展開」日本アフリカ学会第40回学術大会(於島根、2003年5月)
  • 佐藤靖明「バナナの民族植物学的研究-ウガンダ中部ブガンダ地域における栽培・利用・分類」日本民族学会・第5回近畿地区研究懇談会・修士論文発表会(於国立民族学博物館、2004年3月)
  • 佐藤靖明「ウガンダ中部ブガンダ地域におけるバナナの栽培・利用・分類」第9回生態人類学会研究大会(於滋賀、2004年3月)
 
>> フィールド・ステーション活動状況:平成15年10月現在
>> 平成15年度教員・若手研究者の報告
>> 平成15年度大学院生の報告
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