:: 平成15年度 フィールド・ステーション年次報告
インドネシア(マカッサル)
  (1)研究活動:
    マカッサル・フィールド・ステーション(以下MKSFS)は、2003年9月9日に、インドネシア国立ハサヌディン大学(UNHAS)構内に、研究活動の基盤基地となる「MKSFS-UNHAS共同研究室」を開設しました。2004年3月までに、のべ3名のASAFAS院生が派遣されています。2004(平成16)年度には3名が、博士論文の調査活動のため、MKSFSへ向かう計画を準備しています。
  • 2003年9月:田中耕司(CSEAS)、「MKSFS-UNHAS共同研究室」開設のため、UNHAS大学院科長を訪問。
  • 2003年7-9月:Andi Amri(ASAFAS)、「ボネ湾汽水帯域生態環境資源利用に関する調査」を実施。
  • 2004年度への準備:Andi Amri、島上宗子、楠田健太の3名(以上、ASAFAS)が、MKSFSでの臨地調査実施に向けて、研究計画を準備中(2004年3月現在)。
 
     
    ハサヌディン大学構内にある
大学院研究棟
研究棟の5階にある
本FS共同研究室;2室続きです
共同研究室内に整備された
研究調査活動の支援環境
 
     
    隣接する本FS会議室 睡蓮の花:本FSでの活動が花開くように…  
   
  (2)「MKSFS−UNHAS共同研究室」の整備:
   

MKSFSでは、日本からの大学院生の調査研究活動の拠点となることのほかに、もうひとつ、大きな目的を掲げています。それは日本とインドネシアの研究者が自由に意見を交換し、議論を発展させるための環境を整備し、総合的地域研究の最前線基地となることです。現在の「21世紀COEプログラム」が期間を終了してからも、なお、ここで築き上げた国際的な調査研究活動の礎を、さらに発展的かつ持続的な知的空間として共有することを念頭においています。CSEASやUNHASの教官たちが磨き上げてきた臨地調査の手法を、調査の現場において大学院生たちに実践的に教育することが、現行の「21世紀COEプログラム」において、MKSFSを整備することの意義であると考えています。
そのために、2003年度には臨地調査活動のための基盤整備に加えて、UNHASとASAFASが共同で大学院生の教育活動および共同調査活動おこなうことを支援するための環境を整備しました。

  • 臨地調査活動支援:デスクトップ・パソコン/デジタルハンディカメラ/デジタルカメラ等の整備
  • 教育活動および共同調査活動支援:ポータブル・プロジェクター整備/スラウェシ地域研究レファレンス図書室整備/スラウェシ島地形図整備
今年度の研究活動支援の中では、スラウェシ地域研究レファレンス図書(27点)およびスラウェシ島地形図(834枚)の整備が特筆されます。これらの資料はしばしば、インドネシア国内においても入手困難な文献資料であり、CSEAS図書室や地図室データベース等にも所蔵されていないものが含まれています。フィールドにおいては調査活動に専念すべきであることは当然としても、小さな疑問を現場で解決できる機会は必要です。日本の大学院生だけでなく、インドネシアの大学院生もが、いつでも自由にこれらの文献資料を利用できる環境を整備することも、MKSFSの役割であると考えています。
インドネシアのジャワ島やバリ島では、影絵芝居の伝統文化があります。白い布や壁さえあればどこでも撮影したビデオが再生でき、調査地の人びとの顔を見ながら調査内容のプレゼンテーションができるように、ポータブル・プロジェクターを整備しました。臨地調査の手法もまた、日々、変化を遂げてよいのではないでしょうか。それは、地域研究の可能性をどのように開拓するのでしょうか。MKSFSは、院生とともに、その可能性を追求しようとしています。
 
   
  (3)研究業績:
    編著書
  • 岡本正明、2002.”Majulah Sulawesi Bersatu !”(Okamoto Masaaki ed.), JICA, March 2002.
論文など
  • 島上宗子、2002.「『改革の時代』とジャワ農村――政府・住民関係の動態的研究」平成11年度(1999年度)次世代フェローシップ研修報告書、国際交流基金アジアセンター、2002. p.49-66
  • 島上宗子、2002.“Krisis Pedesaan dan Perkembangan dari Dalam: Pengalaman Pembangkitan Desa di Jepang” (農村の危機と内発的発展:日本の村おこしを事例として) In Majulah Sulawesiku (『進め、わたしのスラウェシ』). Japan International Cooperation Agency (JICA). Makassar, 2002 (インドネシア語)
  • 島上宗子、2003.「地方分権化と村落自治――タナ・トラジャ県における慣習復興の動きを中心として――」松井和久編『インドネシアの地方分権化――分権化をめぐる中央・地方のダイナミズムとリアリティー』研究双書No.533. アジア経済研究所、2003. pp.159-225.
  • 島上宗子、2004(翻訳)「第10章 独立国家の『植民地法』」ヘダール・ラウジェン、(阿部昌樹他編『グローバル化時代の法と法律家』日本評論社、2004)
  • 岡本正明、2003.「インドネシアの地方分権−分権の流れと問題の類型化」、『日本の政治経済とアジア諸国[I]政治秩序篇』(編:村松岐夫・白石隆)、国際日本文化研究センター、2003年10月、97-128頁
  • 岡本正明、2004.「地方分権化後インドネシアの中央地方関係−自治体への箍を締め始めた中央政府の諸政策について」、『インドネシアの将来展望と日本の援助政策』、(財)国際金融情報センター、2004年3月、55-71頁
口頭発表
  • 岡本正明、2002.“Participatory Approach for Community Development in the Decentralized Indonesia: Case Study from Sulawesi, Indonesia,” The 7th PRSCO (Pacific Regional Science Conference Organization Institute / The 4th IRSA (Indonesian Regional Science Association) International Conference: “Decentralization, Natural Resource, and Regional Development in the Pacific Rim,” Denpasar, Bali, Indonesia, 20 June 2002.
  • 岡本正明、2003.「政治体制の変動と社会構造の硬直性の狭間にあるインドネシア地方エリートたち」、
    オランダ史研究会第5回「インドネシアとオランダ」、神戸大学国際関係学部、2003年5月24日
  • Amri, A. and K. Tanaka, 2002. "Mangrove Plantation and Land Property Rights: ALesson from Coastal Areas of South Sulawesi, Indonesia", Annual Meeting of Japan Society of Tropical Ecology, (Kanazawa University, 14-16 June, 2002).
  • Amri, A. and K. Tanaka, 2003. "A comparative study to seek for sustainable implementation of silvo-fishery systems in coastal areas in Indonesia", Annual Meeting of Japan Society of Tropical Ecology, (Kagoshima University, 13-15 June, 2003).
  • Amri, A. and K. Tanaka, 2003. "Community participation in rehabilitation, conservation and management of mangroves: Lessons from coastal areas of South Sulawesi, Indonesia", International Workshop of 21st Century COE Program, (Addis Ababa University, 21-23, Oct. 2003)
学位論文
  • 楠田健太、2004.「インドネシアの地域社会とスポーツ――PSMマカッサルの88年」楠田健太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文)
  • 浜元聡子、2004.「島嶼間移動をめぐる社会史的地域研究:<しま>模様の海」(京都大学大学院人間・環境学研究科、博士学位請求論文)
 
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