:: 平成15年度 フィールド・ステーション年次報告
ラオス
  (1)フィールド・ステーションの設置:
    ラオスは、東南アジアの中でも豊かな自然の残された数少ない地域であり、地球レベルの生物多様性保全にとってもきわめて重要な地域です。したがって生物資源保全に対して国際的に強い圧力がかけられ、その利用形態は厳しく規制されつつあり、地域住民の生業や生活を大きく変えようとしています。グローバルな視点に立つ政策と、ローカルな生活システムの軋轢が顕在化してきています。ラオス・フィールド・ステーション(以下ラオスFS)では、大きな変化に直面している生物資源利用と地域社会の関係をフィールド調査に基づいて研究しています。
ラオスFSでは、21世紀COEプログラムの申請段階からカウンターパートとの連絡を密に取り、準備をすすめてきました。2002年5月30日には、京都大学とラオス国立大学との大学間協定が締結され、それを受けてラオス国立大学林学部、農学部とのうちあわせをおこないました。2002年9月27日には林学部と合意に達し、2002年12月13日には、21世紀COEプログラムのラオスFSとして正式に活動を開始しました。2002年度には生方史数が、COE研究員(若手研究者)として2002年12月13日から2003年3月25日まで現地へ派遣されました。 2004年4月からは、増原善之が同じくCOE研究員として現地に派遣されています。
ラオス国立大学林学部研究棟の1階に部屋を借り受けて、連絡事務所を設置しました。ここにはコンピューター1セットと作業机、本棚、標本棚を置き、現地に派遣される教員・学生が活用しています。2003年度のラオスFSに関する教員派遣は、岩田明久(ASAFAS:8月3日-8月6日、3月12日-3月17日)、竹田晋也(ASAFAS:8月4日-8月6日)、安藤和雄(東南アジア研究所:3月5日-3月18日)、平松幸三(ASAFAS:3月12日-3月17日)の4名でした。
ラオスFSは、アジア・アフリカ地域研究研究科のみならず、人間・環境学研究科、文学研究科、農学研究科、霊長類研究所の教員・院生の研究拠点として全学的に活用されはじめています。
 
   
  (2)大学院生の派遣とオンサイト・エデュケイションの成果:
    学生派遣
2003年度に当プログラムの資金によってラオスFSに派遣した学生は、小坂康之(平成12年度入学:5月17日-12月15日)、Saphangthong Thatheva(平成13年度3年次編入学:6月30日-7月25日)、Nathan Augustus Badenoch(平成15年度3年次編入学:12月13日-3月31日)、Soulaphone Inthavong(平成15年度3年次編入学:2月5日-3月28日)の4名でした。
これまでに、ラオスFSを活用し、臨地教育支援をおこなった大学院生および研究テーマは、以下のとおりです。
  • 小坂康之(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)「サバナケート県における農業・土地利用システムと二次植生の遷移」
  • 黒田洋輔(同上)「ラオスの野生イネの自生地保全に関する研究」
  • Thatheva Saphangthong(同上)「Land use systems in the Northern Laos」
  • Anoulom Vilayphone(同上)「Valuation of non-timber forest products and forest management practices of Kham people」
  • Souksompong Prixar(同上)「Village forest management after land and forest allocation in Laos」
  • 松浦美樹(同上)「ラオス北部における生業活動の変容と人々の生活戦略 −ウドムサイ県ナモー郡の低地水田村を事例として−」
  • 山本麻紀子(同上)「中国雲南省西双版納における国営ゴム農場の発展過程と移民労働者の生活史」
  • 広田勲(京都大学大学院農学研究科)「ラオス北部における焼畑耕作システム」
  • 中辻享(京都大学大学院文学研究科)「ラオス焼畑村における土地利用」

具体的には、フィールドへの同行調査、現地セミナー、連絡事務所での日常的な議論や電子メールによる意見交換などを通じて、研究テーマの設定や、研究計画・研究内容に関する議論を深めて、大学院生の研究支援をおこなっています。また、その様子は、適宜、デジタル写真に記録して、CDに保存しています。
 
   
  (3)現地研究機関との共同研究の状況:
    現在の段階では、南部サバナケート県の農地・森林における植生調査(小坂、サイサナ)、同県の魚類相と漁労に関する調査(岩田)、北部ルアンナムター県の非木材林産物交易の調査(アヌロム、竹田ら)が進行中です。現時点では、ラオス国立大学林学部・農学部との共同研究が中心ですが、今後は同大学の他学部や、農林省・情報文化省等の研究所などと積極的に連携することを考えています。  
   
  (4)セミナー、ワークショップなどの実施状況:
    現地セミナーは、2003年2月17日、3月3日、3月12日、8月5日の4回開催しました。第1回は、大学院生2人(広田・松浦)の研究計画の発表であり、第2回は、カウンターパートと竹田・生方・小坂で、今後のステーションの研究に関するブレインストーミングをおこないました。第3回は、加藤真教授(京都大学大学院人間・環境学研究科)によるラオス側への特別講義(生態学)、第4回は参加者11名(増野、秋道、小林、岩田、松浦、虫明、小坂、生方、広田、アヌロム、竹田)による学生ゼミとして開催しました。
2004年3月16日にはラオス国立大学で、Laos Field Station Workshop “Local Natural Resource Use and its Transformation in Lao PDR” をトヨタ財団の研究助成「ラオス Bang Hiang川流域住民の生業における生態資源利用に関する研究」と共催しました。
一方、国内では、2003年11月28-29日の2日間 京都大学芝蘭会館を会場としてInterdisciplinary Workshop on the Forest Dynamics of Thailand: Impacts, ecology, Management and Rehabilitation (タイの森林動態に関する異分野間交流のためのワークショップ:インパクト/生態/管理/修復)を共催し、30人の報告がありました。
また2004年1月25日には京都大学を会場として、Laos Field Station Workshop "Forest Management and Conservation in Laos" を文部科学省総合地球環境学研究所による研究プロジェクト「アジア・熱帯モンスーン地域における地域生態史モデルの構築」と共催しました。
今後も関連プロジェクトとフィールド・ステーションとの連携を深めてゆく予定です。
 
>> フィールド・ステーション活動状況:平成15年10月現在
>> 平成15年度教員・若手研究者の報告
>> 平成15年度大学院生の報告
平成15年度 フィールド・ステーション年次報告

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